<![CDATA[コールセンターの教科書プロジェクト - コラム全文]]>Sat, 28 Nov 2020 04:24:46 +0900Weebly<![CDATA[新型コロナはコールセンター進化(リモート化)の絶好のチャンス]]>Tue, 19 May 2020 15:00:00 GMThttp://cc-kyokasho.jp/1246712521125122084025991/3443734
少々不謹慎に聞こえるかもしれませんが、新型コロナ禍は、コールセンターの進化を図る絶好の機会です。
 
それはすなわちコールセンターの「リモート化」であり、そのためには、旧態依然たるセンター運営の刷新が絶対条件となります。それにより、膠着状態にある諸問題(例えば人手不足)の改善・解消が期待できます。さらにマネジメントの進化は、国内コールセンターのガラパゴス状態脱却の契機となります。
 
コールセンターのリモート化は、20年来の課題の1つではありますが、あくまでもオプション的な扱いで優先順位は低いままでした。しかし、今回の“半強制的な”リモート化により企業がそのメリットを知るところとなり、一気に最優先事項に格上げとなったのです。つまり、今こそリモート化のための投資を引き出す絶好のチャンスだと言えます。
 
 
リモート化のための7つの必須条件
 
今回、リモート化に踏み切ったコールセンターのほとんどは、ぶっつけ本番の“実験”でした。
それでも、全体としては大きなトラブルや苦情に発展することもなく、今のところ無事に推移しています。
 
ただしそれは、緊急事態という状況下において、顧客もエージェントも十分に寛容でいてくれたからです。
このままでいけると安易に考えてはいけません。今はそれで済んでいるだけのことですから。
 
本格的なリモート化のためにやるべきことは多々ありますが、その中でも最初に取り組むべき7つの事項を示しておきます。
 
1. オフィス環境
 
認識すべきは、日本企業のコールセンターのオフィス環境は、コロナ禍にかかわらず、総じて貧弱で低質であることです。
コールセンターの「3密」は、新型コロナウイルスではなく、「大人数」「詰め込み」「狭いデスク」「島型対向式のレイアウト」「パーティションなし」という、日本企業の典型的なオフィス環境が引き起こしたと言えるのです。
 
今後、リモートの恒常化が進めば、センターのオフィススペースの縮小が図られるでしょうが、同時に、残るスペースの環境改善もおこなう良い機会です。
 
また、リモートオフィスの環境については、通信、住宅、育児、介護などエージェント個人の事情に応じたケアが必要です。もし自宅でのエージェント業務に難があれば、徒歩や自転車で通えるサテライトオフィス(シェアオフィスやホテルなど)を提供してください。
 
感染症対策に限らず、通勤をなくすことは、エージェントにもコールセンターにも大きなメリットとなります。
 
2. テクノロジー
 
第一に、言うまでもなく「クラウド」です。
今回のコロナ禍で、リモートの可否を決定づけるプラットフォームとして、クラウドサービスは一気にコールセンターの標準装備に昇格しました。
安価なクラウドアプリを利用する小規模のスタートアップ企業が当たり前のようにリモート化するのを見て、オンプレミスのPBXで重装備した大規模なコールセンターのセンター長が地団駄を踏む様子が見られました。しかし、彼らがこれまでクラウドに手を出さなかったのは、セキュリティーや安定性に対する過剰な警戒心、いわゆる食わず嫌い、そしてセンター長の怠慢です。予算は格段に安くなるのですから導入を渋る言い訳にはなりません。
もはや、クラウドを導入しない理由はどこにもないのです。
 
また、突然のリモート化で、提供するサービスの取捨選択やリソースの調整を図る過程で、エージェントがおこなってきた“不要不急”の仕事や、セルフサービス化できる仕事が多く見つかりました。この機会に、そんな仕事の一掃(デジタル化やセルフサービス化)を徹底してください。
 
そして、エージェント個人のICT環境のサポートです。
ノートPCとWi-Fiなどの通信環境、ヘッドセットは当然のこととして、エージェントの健康管理や生産性を考えれば、ディスプレイ、ワイヤレスマウス、ワイヤレスキーボードも必需品と言えます。
コミュニケーション、トレーニング、ゲーミフィケーションなどのさまざまなオンラインツールやアプリも、エージェントのエンゲージメントを維持するために欠かすことができません。
 
3. BCP(業務継続計画)とDRP(災害時復旧計画)
 
コンピューター2000年問題(通称Y2K)、2009年の新型インフルエンザ(H1N1)、2011年の東日本大震災と、これまでに3回、BCPやDRPの必要に迫られる機会がありました。
しかし、外資系企業に比べて危機管理意識が見劣りする日本企業のコールセンターが、本格的なBCP/DRPを装備する例は稀でした。
 
一部を除き表面化していませんが、すでにBCP/DRPを備えている外資系企業の多くは、コロナ禍開始当初の2月末から3月初めにかけて、大騒ぎすることなく、サッサと全面リモートに移行しました。
一方、日本企業の多くは緊急事態宣言下においても出勤を続け、社会的な非難を浴びることになりました。
 
そんな日本企業のセンターから、“コールセンターは極めて重要な社会インフラ”という声が聞こえてきました。であるならば、なぜリモートの態勢を整えないのか、BCP/DRPを備えていないのか。大きな自己矛盾と言わざるを得ません。
 
BCP/DRPは、設備などハード系の準備と決め付ける向きが多いですが、その本質は、緊急時/災害時におけるサービスレベル(コールセンターの評価指標のことではなく一般名詞としての広い意味です)をどう設定するかにあります。平時と同じサービスが提供できない緊急時/災害時のサービスレベルをあらかじめ定めているからこそ、大騒ぎすることなく、粛々と非常時態勢に移行できるのです。
それがない日本企業は、平時のサービスレベルを基準に考えるため、あれもできない、これもできないとなり、結局何もできないのです。
 
今回で4度目の正直です。“社会インフラ”を自負するのならば、今度こそBCP/DRPを整えるべきでしょう。
 
4. 業務プロセス&トレーニング
 
リモートの環境で、「属人的」「暗黙知」といった日本的な仕事の仕方が機能するはずがありません。
仮に、リモートエージェントが全国に散らばったとしても、全員が同じプロセスで、同じ品質の仕事ができなければなりません。
 
そのためには、これまで疎かにしてきた業務の標準化やマニュアル化、それを徹底するためのトレーニングを、避けて済ませるわけにはいかないのです。
 
5. 人事制度
 
今回のコロナ禍で、日本企業の非正規「差別」の実態や、その根深さが露呈することとなりました。
聞こえてくる数々の事例に、非正規「差別」を正当化する合理的な理由は、何一つ見当たりません。
 
リモート化で分散した個人の職務や責任が明確になることで、そうした合理性のない旧弊/悪弊が炙り出され、それを放置することで「ブラック」のレッテルを貼られることになります。エージェントはそんな企業を捨て、決して帰ってくることはありません。
 
この際、組織・人・仕事を「属性」で考える(メンバーシップ型)のではなく、「職務」を基準に考える(ジョブ型)よう転換を図り、例え非正規社員を採用していなくとも、コールセンターやリモートワークの環境に適した人事制度、評価制度、報酬制度の構築を進めることが必要です(注)。
 
6. ワークフォースマネジメント
 
「ワークフォースマネジメント」は、コールセンターのすべての活動の起点として絶対不可欠の作業です。
ところが、いわゆる“勘と経験”によって、それなしで済ませてきたセンターの方がはるかに多数派であるのもまた事実です。
 
しかし、さすがにリモートセンターではそういうわけにはいきません。
集団でいる時のように、個人の配慮や仲間同士の助け合いでカバーし合って済ませることができないからです。
 
「業務量を正確に予測し、それに見合った最適な人数を求め、個人の事情や希望を配慮した効果的なスケジュールを策定する」ことをきっちりとおこない、リモートエージェントの一人ひとりに的確に指示し動かしていかなければなりません。
 
さらに、リモートの特徴としてエージェントのスケジュールの柔軟な運用、例えば、1日の中で勤務シフトを何回かに分ける「スプリットシフト」や、上限時間の範囲内で業務量の変動に合わせて毎日の勤務時間を柔軟に変える「フレックスシフト」などが可能となります。これこそ、ワークフォースマネジメントなしに運用することはできません。
 
7. エージェント・エンゲージメント
 
大雑把に言うならば、リモート環境におけるエージェント個人に対するケアということです。
コミュニケーション、モチベーションといったメンタル面のケアが中心となりますが、そのことに関しては、コールセンターに限らず、すでに膨大な事例や知見が紹介されています。
 
上記1~6が整い、リモートワークが軌道に乗ってくれば、この「エージェント・エンゲージメント」が、管理者にとって最も重要な取り組みとなるはずです。
 
 
この絶好の機会を逃さない
 
コールセンターのリモート化にメリットが大きいことに議論の余地はありません。
新型コロナという厄介なきっかけとはいえ、リモート化が実現できる絶好の機会を手放してはなりません。
 
しかし、若干の心配があります。
 
それは、この間の国内の業界の論調が、リモート化できないセンターの現状を正当化し、出勤を前提としたオフィスにおける3密解消策ばかりが語られ、リモート化推進の機運が感じられないことです。
また、リモート化をPRした一部の企業の事例を「極めて特異な先進事例」として持ち上げ、あたかもリモートの一般化は現実的でないと喧伝するかのような採り上げ方がされているのも気になります。
 
この両者から見え隠れするのは、コロナ禍が収束のあかつきには、「元の姿に戻る」ことを前提にしているのではないかということです。
諸外国のコールセンターが、リモート化の本格展開へ向けての知識、ノウハウ、経験などの話題や情報一色で、大きな盛り上がりを見せているのとは、あまりに対照的です。
 
多少のリモート化は図られたとしても、上記の7つの事項には手が付けられないまま、マネジメントの進化が見送りとなり、国内コールセンターのガラパゴス状態からの脱却の機会を手放してしまうのでしょうか。
 
「元に戻る」ことは、現状維持バイアスにかかった思考停止状態であることに他なりません。
この絶好の機会を絶対に逃してはならないのです。

注: 濱口桂一郎. “「ジョブ型正社員」と日本型雇用システム”. https://www.nippon.com/ja/currents/d00088/
 
 
※この記事の内容は、国内コールセンターの最大公約数的な状況を基準にしており、さまざまな例外がいくらでも存在します。日本企業と外資系企業の対比についても、相対的な比較に過ぎません。


熊澤伸宏(文/Vol.31)

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<![CDATA[ライブチャットの測定指標(KPI)とパフォーマンスレポート]]>Sun, 17 May 2020 15:00:00 GMThttp://cc-kyokasho.jp/1246712521125122084025991/kpi
昨年2月4日付のコラム「チャットの測定指標」で、ライブチャットの業績評価や運営管理に必要な24の評価指標を発表しましたが、それはまだ、曖昧さや改善の余地が残るものでした。
 
その後、欧米の数々の知見に加えて、ライブチャットの運用に4年半の経験を持つECビジネスのコンタクトセンターにパフォーマンスレポートを導入し、半年間にわたって実地データによる検証をおこなってきました。
 
その結果、前回残った曖昧さがクリアになり、測定指標を前回の24から18に絞り込むことができました。
また、毎日の運営管理に必須のパフォーマンスレポートに使う測定指標を選定し、そのフォーマット例を作成しました。
 
ライブチャットの測定指標(KPI
 
まずは、ライブチャットのオペレーションの“総合評価”をおこなうのに必須の測定指標を示します。
前回の更新版ということになります。いくつか補足を加えます。
  • この18の測定指標は、顧客サービス系、テクニカルサポート系を問わず、ほとんどすべてのライブチャットのオペレーションに共通します。なお、テクニカルサポート系のオペレーションの場合は、これらに「チケット管理」に関する指標を加えるのが一般的です。
 
  • 今回より「チャット・セッション」「チャット・メッセージ」という用語を使っています。「チャット・セッション」とは、「チャットによる会話の開始から終了まで」を言います。「チャットの画面を開いてから、チャットの会話を経て画面を閉じるまで」と言い換えることもでき、電話の「応答」から「切断」までに相当します。「チャット・メッセージ」とは、「チャット・セッション内で交わされる1つひとつのチャットによる会話」を指しま す。つまり、ひとつのチャット・セッションは、複数のチャット・メッセージから成るということです。電話の場合 は、顧客とエージェントの会話のやりとりは連続していますが、ライブチャットの場合は、メッセージを発するたびに「Enter」を押すなどの発信作業をともなうため、会話が分断され、相手からの返信を待つ時間が生じます。そのため、この2つの切り口で見ることが必要となります。
 
  • ライブチャットは電話の場合と同じく、「平均応答時間」が顧客の満足度を大きく左右します。ただし、ライブチャットの場合は、上記の2つの切り口から見ることになります。ひとつが「平均初回応答時間」、もうひとつが「平均メッセージ応答時間」です。前者は、「顧客が最初のチャット・メッセージを発してからエージェントが返信するまでの時間の平均」であり、電話の「平均応答時間」と同義です。後者は「顧客が発した1つひとつのチャット・メッセージにエージェントが返信するまでの時間の平均」であり、ライブチャット独特の指標です。この時間が長いと、エージェントが返信メッセージを入力している間に、顧客が放棄してしまう(チャットを切断してしまう)といったことが生じてしまいます。
 
  • 「チャネル転換率」(または「転送率」)は、「いったん開始したチャット・セッションの途中で、電話など他のチャネルに切り換えるためにチャット・セッションを終了したケースの割合」のことです。これは、エージェントの知識不足による専門部署や上位者へのエスカレーションのことではなく、ライブチャットというチャネルの特性上の理由から、他のチャネルに切り替える場合が該当します。例えば、顧客の複雑な問題について、チャット・メッセージでは埒が明かず、電話の方が早く正確にコミュニケーションできると判断し、チャット・セッションを終了して電話に切り替えるといったケースです。なお、上表では、「効率性パフォーマンス」に属していますが、「サービス・パフォーマンス」として評価する考え方もあるでしょう。
 
  • 前回、ライブチャット独自の運営指標として掲載した「チャット開始率」などについては、その後の精査の結果、センターごとのライブチャットの目的や運用に応じて使われるものであること、用語の表記や定義など、現状ではセンターによって、あるいは使用するチャット・システム(アプリやソフトウエア)によって異なるといった事情により、多くのライブチャット・オペレーションに共通するものではないことから、今回は掲載を見送りました。
 
これらの補足に加えて、18の測定指標のすべてに関する解説は、『コールセンター・マネジメントの教科書』第6章の追加情報として、同書の「読者専用サポートページ」にて掲載する予定です。


ライブチャットのパフォーマンスレポート
 
次に、「ライブチャット・パフォーマンスレポート」のサンプル・フォーマットを示します。
このフォーマットで使われている12の測定指標が、オペレーションの現場でライブチャットの毎日の運営管理のために見るべき必要最低限の指標ということになります。顧客サービス系のセンターであれば、このままでも十分使用できますが、センターの規模やサービスのタイプなど、各センターのニーズに応じた指標を適宜追加してください。以下に例を示します。

  • 「チケット管理」関連指標: テクニカルサポート系のセンターに一般的な「チケット管理」関連指標を追加します。
 
  • ソース別の分類: ライブチャットの発生の仕方は、「インバウンド」(顧客が最初に発信)、「アウトバウンド」(エージェントが最初に発信)、「インビテーション」(Webサイト上にポップアップしたチャットウインドウに顧客が反応)の3つに大別できます。正式な「アウトバウンド」の業務プロセスが存在する場合や、「インビテーション」の効果を測定したいといったニーズがある場合などは、各指標のソース別の内訳を追加します。
 
  • 「初回チャット・セッション完了率」: 最初のチャット・セッションで顧客の用件が完了した割合です。電話の「初回コール完了率」(First Call Resolution; FCR)と同義です。顧客満足に大きく影響するため、測定が可能であれば、サービス品質に追加しましょう。
 
  • 「平均同時セッション数」: 1人のエージェントが同時に応対したチャット・セッション数の平均です。エージェント数の算出の重要な要素なので、「同時セッション」を意図して使用、または恒常的に発生している場合は必ず測定します。
 
  • 「チャネル転換率」: チャネル転換の頻度が高いなど、測定の必要性が高い場合は追加します。
 
12の指標の定義や計算式に関する解説は、『コールセンター・マネジメントの教科書』第6章の追加情報として、同書の「読者専用サポートページ」に掲載しています。
 
リモートワークの拡大にともない、ライブチャットの重要性も高まっています。
しっかりとレポートを作り、事実(=数値)に基づくマネジメントの実践がますます必要です。

関連記事
(ライブチャットの運営シリーズ第1回)チャットの測定指標
(ライブチャットの運営シリーズ第2回)本当にチャットは電話より安いのか?
(ライブチャットの運営シリーズ第3回)ライブチャットのエージェント数を算出する
(ライブチャットの運営シリーズ最終回)ライブチャットの正しい使い方――5つの鉄則


熊澤伸宏(文/Vol.30)

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<![CDATA[COVID-19:個人情報はコールセンターがテレワークをしない言い訳にはならない]]>Fri, 24 Apr 2020 15:00:00 GMThttp://cc-kyokasho.jp/1246712521125122084025991/covid-199950793
いまだに多くの(特に日本企業の場合は大半の)コールセンターが、「3密」環境のままオフィスでの業務を強行しているのは、あきれるばかりです。
そんな中、今週になって、従業員と業界双方の声がメディアに発信され始めました。
 
従業員の声は、言うまでもなく感染に対する恐怖とテレワーク実施などの改善要求、そして企業に対する強い不信感です。下記の記事がその実態をよく表しています。
コールセンターの「極限3密」苛酷実態、非正規雇用の不安が追い打ち
 
一方の業界の声は、総じて言えば、オフィスでの業務強行を前提に、テレワークしないことを正当化する論調となっています。その姿勢や考えがあまりに残念で、憤りすら覚えるのが正直なところです。
 
彼らが、その第一の理由として声高に挙げるのが「個人情報」です。
 
個人情報に自宅からアクセスするわけにはいかないということのようですが、もし「個人情報保護法」を念頭に置いてそのようなことを言っているのであれば、それは同法の主旨をまったく理解していない、極めてナンセンスな言い分に過ぎません。
 
個人情報保護法は、個人情報利用禁止法ではありません。個人情報を社外で扱ってはならないなどという条文はどこにもありません。
自宅でアクセスすることが良い・悪いではなく、個人情報をどこで取り扱おうが、個人情報取扱事業者として法に定められた安全管理措置をしっかり講じているかどうかが本筋です。それができていれば、何の問題もなくテレワークができるのです。
 
つまり、自分たちが安全管理措置を怠っていることが本当の理由なのに、「個人情報だからできない」と論点をすり替えて言い逃れや責任転嫁をしているに過ぎないのです。
 
また、本当に理解不足で「個人情報だからダメ」と思い込んでいる論外な管理者の存在や、「契約社員にアクセスさせるわけにいかない」といったあからさまで理解不能な非正規社員差別まで見られるのは、全く以って何をか言わんやです。
 
いずれにしても、個人情報は、コールセンターがテレワークをしない理由はおろか、言い訳にもならないのです。
 
 
個人情報の他には、「労務管理(おそらくエージェントのケアやコミュニケーションのことだと思いますが)ができない」「自宅で受電する仕組みがない」とか、「自宅の環境がエージェント業務をおこなうのに適さない」というのが、3密強行センターに共通の言い分です。
 
エージェントのケアについては、AIをはじめとするITツールの登場で、一昔前に比べて、はるかにリアルに近いコミュニケーションが、さまざまな方法で取れるようになっているはずです。
受電については、クラウドの登場で、これも一昔前に比べてはるかに安価で手軽にテレワークができるようになっています。
 
ところが、つい先日までは、「電話は古い」「人に頼る時代ではない」などと決め付けて、時も場所も人も選ばない今どきのITツールに業界を挙げて大騒ぎしていたはずなのに、手のひらを返すように、電話やオフィスでのリアルありき一色になっているのは一体どういうことでしょう。
 
今こそ、それらITツールを駆使して、テレワークを実践する好機なのではないでしょうか。
 
また、エージェントの自宅の環境がさまざまであるのは当たり前です。
 
電話業務が難しければ、チャットやメールをアサインしてください。それも難しければ、顧客応対ではない業務(この機会にできることがいくらでもあるはずです)を与えてください。
在宅により保育所に預けられない場合は、育児をしながらの業務を認めてください。あるいは、自転車か徒歩で通えるサテライトオフィス(ホテルや貸会議室など)を用意すれば、保育所を利用でき、安心して業務をおこなうことができます。
 
いろいろあるから「できない」「やらない」のでなく、どうすればできるかを考えてください。
 

そしてもうひとつ、コールセンターを「社会的ライフライン」とするのは言い過ぎです。
もちろんそれに相当するコールセンターもたくさんあります。
 
しかし、そうではないビジネスの方が多いのは事実でしょう。
ただし、「既存の顧客に対するケア」は、どんなビジネスでも必要であり守らねばなりません。
だからといって、それを「電話で」「オフィスで」やらなければならない理由はありません。
 
つまり、単純かつ十把一からげに「コールセンターは重要」と決め付けて、「だからテレワークできない」とする論理は成り立たないということです。
業務の内容、顧客、チャネルなど、多くの選択肢を切り分けて、その必要性や優先度を考えるべきです。
 
 
とにかく今、センター長がすべきことは、一刻も早くオフィスを閉鎖して、通勤をなくすことです。
重要なのは、それが自社のためだけでなく、社会に対して果たすべき使命であるということです。
社員として企業の目的達成に努めるように、国全体の目的達成に貢献してください。
 
完全テレワークへの移行をPRした保険会社のコールセンターが、あたかも先進事例のように採り上げられていますが、タイミングも内容も、それに勝る事例はいくらでもあります。
オフィス環境にしろ、情報の安全管理措置にしろ、エージェントのケアにしろ、業務プロセスにしろ、普段から着実な運営をおこなっているセンターは、決して大騒ぎすることなく、さっさとテレワーク化しています。保険会社の例は、決して例外ではないのです。
 
「そんなこと言ったって、今すぐできるわけないだろ」とおっしゃいますが、そんなことは当たり前です。
 
さっさとテレワーク化したセンターだって、多くの犠牲や不自由を抱えながらやっています。
「できない理由」を並べ立て思考停止に陥るのか、「STAY HOME」という目的達成のためにチャレンジするのかの違いです。
 
目的は明確なのですから、もう選択肢はありません。
今、センター長に求められるのは「やるしかない!」これのみです。

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<![CDATA[COVID-19: "3密職場"の代表、コールセンターの一刻も早い完全テレワーク化を急げ]]>Sat, 18 Apr 2020 06:22:28 GMThttp://cc-kyokasho.jp/1246712521125122084025991/covid-197332855
コールセンターは「最もリスクの高い3密職場」です! 

​「大人数」「詰め込み」「狭いデスク」「島型対向式のレイアウト」「パーティションなし」――日本企業の典型的なコールセンターのオフィスを表すキーワードです。
この環境で、勤務時間の大半を声を出して話しながら過ごしているのですから、まさに「3密職場」の典型例であることに議論の余地はないでしょう。
 
緊急事態宣言が全国に拡大された今、コールセンターの感染症対策は、オフィスにおける感染防止策ではなく、オフィスをクローズする、つまり「完全テレワーク」化することが明確になったと言えます。
 
にもかかわらず、今、全国で膨大な数のコールセンターが誕生しています。
言うまでもなく、小池東京都知事の『コールセンターを開設します!』に右ならえで、全国の自治体が我もわれもと、競うようにコールセンターを立ち上げているのです。
 
そのことを批判するわけではありません。絶対に必要なことだからです。それが、「完全テレワーク」で行われるのであれば・・・。
 
ところが、そのほとんどは、自治体から委託を受けたコールセンター・アウトソーサーによる「3密型」のセンターです。特需に沸くアウトソーサーは、そのためのオフィススペースの取り合い状態にあるということです。
 
一方、諸外国では、コールセンターを最も危険な「3密職場」として、強く警戒しています。
 
例えば韓国では、コールセンターでソウル市最大のクラスターが発生したことにより、カラオケ、ネットカフェ、スポーツ施設などとともに、コールセンターを「最もリスクの高い職場」として指定しました。そして、ソウル市の500を超えるすべてのコールセンターと、その従業員が通う近隣都市をつなぐ公共交通機関の施設や機材の消毒をおこない、全国のコールセンターに感染防止対策の強い指示を発出しました。
 
また、アメリカ、フランス、スペイン、ポルトガル、チュニジア、モロッコ、カメルーンなどを始めとする欧米諸国では、労働組合によるコールセンターの閉鎖要求やストライキの動きが拡がっています。
 
このような諸外国の動きをよそに、日本では今、全国で「3密型コールセンター」が乱立していることに、とても違和感を覚えます。
 
とにかく、全国のコールセンター関係者の皆さんには、コールセンターは「最もリスクの高い3密職場」であることを自覚していただきたいのです。
 

一刻も早く「完全テレワーク化」してください! 

テレワークができないコールセンターなどあり得ません。
あれこれ理由をつけて「できない」というのは、言い訳にしか聞こえません。
 
もちろん、平時とまったく同じにできるわけがありません。
 
平時と比べて、「あれができない」「これもできない」とできない理由を並べ立てるのは、センター長が思考停止に陥っていると言わざるを得ません。
 
そうではなく、「できること」をやればいいのです。
「できないこと」がいくつもあっても、今は顧客の理解が得られるはずです。
 
9年前の3.11の時に比べれば、クラウドサービスを始めとする、テレワークを実現するためのテクノロジーやツールは種類も数も激増し、その価格は劇的に低下しています。これまで、そのための投資を怠ってきたとしても、行政によるテレワーク化支援のためのさまざまな支援が利用できます。
それらを活用して、少しでも平時の状態に近いサービスを提供できる環境を作るのがセンター長や経営者の使命であるはずです。
 
もし、テレワークが「できない」ではなく、「しない」「したくない」「すべきでない」などと考える経営者やセンター長がいるとしたら、それは従業員に対する労働法上の「安全配慮義務」を損なうものであり、そんな人たちには即刻退場していただきたいものです。


追記:「完全テレワーク」化したら2週間は「完全自宅待機」を
 
元々リモートワーカーである筆者の印象では、運動不足解消の声に煽られて、わざわざ外に出るテレワーカーの増加を実感しています。
 
確かに、都心の繁華街などの人出は激減していますが、その代わり地域の商店街や公園などが、平時よりも明らかに賑わっています。せっかくテレワークをしても、地域のリスクを高めることにつながりかねません。
 
したがって、「完全テレワーク」に移行した際には、当初2週間は「完全自宅待機」することをお願いしたいところです。

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<![CDATA[COVID-19:それでも通常営業を強行し続けるのですか?]]>Sun, 12 Apr 2020 13:16:55 GMThttp://cc-kyokasho.jp/1246712521125122084025991/covid-19
この期に及んで、通常営業(オンサイトのオペレーション)を強行し続けているコールセンターが少なくありません。在宅勤務に不可欠な通信インフラやITツールを提供する企業ですら、その例外ではありません。
 
この状況は、リスクにさらされながら(もしかしたらリスクを撒き散らしながら)、通勤を余儀なくされているエージェントがたくさんいるということです。本人はもとより、その家族にとっても、毎日どれほどの心配、いや恐怖に苛まれていることでしょう。
 
それなのに、どうしてオンサイトを続けるのでしょうか。
 
彼らの言い分を聞くと、そのほとんどが「使命感の履き違え」「思考停止状態の責任転嫁」「時代錯誤の経営者」のいずれかにくくられます。


使命感の履き違え
 
確かにコールセンターの仕事は「不要不急」ではありません。
 
この状況だからこそ生じる顧客のさまざまな問題に対するケアは絶対必要です。
例えば、中止になったチケットの払い戻しの案内をしっかりおこなって、顧客を安心させなければなりません。
 
そのために、いついかなる時も、顧客サービスは継続する必要があるのです。
 
だからといって、それをオンサイトでやらねばならない理由はどこにもありません。
ましてや、多くのエージェントやその家族をリスクにさらしながら通勤させる理由は絶対にありません。
 
それでも通勤を強いるセンター長は、コールセンターが典型的な「三密職場」であることを強く自覚すべきです。
日本でも、いくつかのコールセンターで感染者の発生が報道されましたが、幸運にも大事には至っていないようです。
 
しかし、コールセンターが大規模なクラスターと化した韓国では、政府がコールセンターを最もリスクの高い場所の一つとして特定し、厳しい規制をかけました(注1)。
また、ポルトガルでは、コールセンターワーカーズユニオン(労働組合)が、コールセンターの閉鎖(テレワークへの移行)を条件にストライキを要求しました(注2)。フランス、アメリカ、スペイン、チュニジア、モロッコ、カメルーン、ベルギーなどでも同様の動きが拡がっています。
 
もはや、世界中でコールセンターが危険な職場であることが認知されている状況において、それでもオンサイトの強行継続を正当化することは、とてもできないでしょう。
 

思考停止状態の責任転嫁
 
もちろん、どのセンター長も在宅オペレーションにしたいと思っているはずですが、口を揃えて「そうしたくてもできない」と言うのです。
 
その理由は、第一にシステム環境です。オンプレミスのPBXだからオンサイトでしか受電できない、クラウドはセキュリティーやシステムダウンが不安、社内の業務システムが外部接続できない、ノートPCを支給できないなど。
もうひとつがビジネスプロセスの問題です。その内容は、センターによって事情が異なりますが、ひっくるめて言うならば、会社にいないと仕事が回らないとか流れないということです。
 
率直に言って、これらは皆、言い訳であり、責任転嫁に過ぎません。
なぜなら、どれも、“予めわかっていること”、つまり“平時に解決あるいは対策しておくべきこと”ばかりだからです。
 
そんな彼らに共通するのが、「すべてが平時とまったく同じようにできなければならない」としか考えられない頭の固さです。
 
感染症、地震、豪雨災害・・・どんな場合でも、有事の時には「できること」と「できないこと」があるのは当たり前です。それくらいの柔軟な思考を持たずに、「あれもできない」「これもできない」、だから「何もやらない」のは、思考停止状態に陥ったセンター長の怠慢としか言いようがありません。
できない理由を並べ立て BCP対策やIT投資を怠ってきたツケが、今まさに回ってきたのです。
 
こんな時、既存のサービスの低下には、顧客の理解が得られます。
エージェントの健康と生活を守ることを最優先することに、異議を唱える顧客はいません。
そのために、「在宅でできること」に絞ってオペレーションを構築すればよいのです。
 
キャパシティーの低下は避けられない中、可能な限り安定したオペレーションをおこなうには、電話のようにコントロール困難なチャネルを停止して、メールやWebに集約するのが理想です。
 
電話を完全停止できない場合は、クラウドサービスです。安価で、すぐに導入できて、期間限定で使えるというのは、一昔前までのオンプレミスオンリーの頃を考えれば、これほど都合の良いものはありません。平時の時の不安感を並べ立てるのでなく、有事の時の使い方を考えましょう。
 
やり方はいくらでもあります。
ただし、「時差出勤」や「交替制で在宅勤務」などでごまかさないでください。
するべきはオンサイトをやめること=通勤をやめることです。
 
 
時代錯誤の精神論を振りかざす経営者
 
「こういう非常時こそお客さまのために!」などというキレイごとで、出社前提の前時代的な精神論を振りかざす時代錯誤の経営者の存在も少なくないのです。
 
この人たちは、普段から何か事が起こると、「コールセンターが休日出勤して顧客応対に当たれ!」とお約束のように要求します。とにかく「何が何でも営業続行」であり、戦国時代に例えれば、常に「殿(しんがり)を務めよ」という発想の持ち主です。
 
そんな人たちが、小池東京都知事の緊急事態対策案の『コールセンターを設立します』に触発され勇気づけられてしまったのですから始末が悪い。
 
でもそこは、「現場を守る」ために、センター長が勇気を振り絞って闘うことが必要です。
 
 
このコラムは2020年4月12日現在の状況に基づき記したものですが、今後、日本でもオンサイトを続けるコールセンターでクラスターが発生し、すべてのセンターの閉鎖要請の発出という事態に見舞われるかもしれません。
 
そうなれば、顧客に大変な迷惑をかけ、ビジネスに大きな損害を与えること以上に、大多数が時給ワーカーであるエージェントの生活が苦境に陥ることになることも認識しておいてください。
 
そんなことにならないよう、一刻も早く、在宅オペレーションへの完全移行を実践してください。


注1:“South Korea reports jump in coronavirus cases after call center outbreak.”2020/3/11, REUTERS.
注2:“Union calls for closure of major call centers.”2020/3/13, PUBLICO. “Coronavirus: Call center workers advance to strike.”2020/3/15, PUBLICO.


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熊澤伸宏(文/Vol.27)

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<![CDATA[組織図は優れたコールセンターのバロメーター]]>Sat, 24 Aug 2019 15:00:00 GMThttp://cc-kyokasho.jp/1246712521125122084025991/1174939
仕事柄、いろいろな企業のコールセンターを訪問する機会があります。
 
初めての訪問の場合、まず、その企業やコールセンターの説明を受けることになりますが、
その際にいつも、日本企業と欧米企業との大きな違いを感じています。
 
それは・・・
 
欧米企業では、必ずと言って良いほど、最初に組織図を見せられます。
組織図を見ながら、業務の概要などの説明を受けるのです。
 
欧米企業は、仕事の在り方と組織の形状が合致しており、矛盾がありません。
また、一人一人のスタッフの職務(役割、機能、権限)が明確で、それらがそのまま組織図に反映されています。
 
したがって、組織図を見れば、その企業やセンターがどのように仕事をし、
チームや個人がどんな役割や責任を担っているかを一目瞭然で理解できるのです。
 
一方、日本企業の場合は、組織図を見せられることはありません。
リクエストしても、すぐには出てきません。
なぜなら、「組織図なんて作ってない」からです。
 
それならばと作成をお願いしても、その出来上がりは、組織図というよりも「人員一覧表」程度でしかありません。
それを見ただけでは、仕事の概要はおろか、時には部署名すら曖昧でよくわからないのです。
とてもトレーニングや第三者への説明に使える代物ではありません。
 
どうしてそうなってしまうのか尋ねると、「いろいろあるから」だそうです。
 
例えば、人事上の上司部下の関係と実務上のそれとが異なっていたり、恒常的な業務と単発のプロジェクトとの区別がついていなかったり、管理職でないのにSVと称してエージェントの業績評価をしていたり・・・など、
「いろいろ」は枚挙にいとまがありません。
これでは、組織図が書けないのも無理はありませんね。
 
 
こうなってしまう原因は、日本企業の組織が仕事と連動していないことにあるように思います。
 
属人的、とよく言われるように、日本企業の多くは、仕事でなく人を起点に組織や仕事の分担が決められるため、一つ一つの仕事の役割、機能、権限などが明確にされず曖昧です。
明確でなくても、集団で助け合って仕事をこなしていくので、それで済んでしまうのです。
ちなみに日本企業でジョブ・ディスクリプション(職務記述書)が滅多に作られないのは、そのためです。
 
伝統的な一般事務系オフィスワークなら、それで済むかもしれませんが、
多くの人材を抱え、一貫性を旗印に組織で仕事をするコールセンターにとっては、まさにそのことが致命傷になります。
 
組織図が描けない組織には、例えば次のような症状が表れます。
 
  • 現場は、組織のミッションや戦略などに無関心
  • 指揮命令系統が曖昧で、上司よりも「よく知ってる人」を信頼する
  • 目標設定も業績評価も基準がよくわからない
  • 人事上の職階、組織、実務が連動しておらずキャリアパスを描けない
  • 仕事のやり方や顧客サービスが人によって異なり(バラバラ)一貫性がない
  • 知識や経験を共有できず、組織のノウハウとして継承できない
 
こんなやり方で仕事をしている限りは、組織図なんて必要ないし、描こうと思っても描けないのです。
 
 
このように見ると、コールセンターにとっての組織図とは、組織がしっかり機能しているか、そうでないかを示すバロメーターだと言えそうです。
 
 
 
熊澤伸宏(文/Vol.26)
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<![CDATA[コールセンターのパフォーマンス評価 “8つの禁じ手”]]>Sat, 29 Jun 2019 15:00:00 GMThttp://cc-kyokasho.jp/1246712521125122084025991/-8

去る5月29日、「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2019 in 大阪」の特別講演にて、『コールセンターのパフォーマンス評価 “8つの禁じ手”』というタイトルで話をしました。
 
講演のスライドは、こちら からご覧になるか、ダウンロードすることができます。
 
筆者は通常、講演のプレゼンテーションのスライドには細かな説明文を書きません。
そのため、今回の講演のスライドを読むだけでは誤解を生じる心配があるため、このコラムで補足の説明をすることにしました。

まず、8つのタイトルですが、これらはすべて“禁じ手”を書いています。

例えば、1. の場合、「サービスレベルを1日平均で評価してはいけない!」と言っているわけです。
決して、「1日平均で評価しよう」というわけではありませんので、くれぐれもご注意を。 

それでは、以下、講演のスライドと合わせてお読みください。


1. サービスレベルを1日平均で評価 

サービスレベルの本質は、すべての時間帯で目標を達成することにあります(注1)。
1日単位の平均値で評価すべきではありません。
スライドの事例のように、1日の単純平均では目標(80%以上)を達成していますが、大幅に目標を下回った午前中の惨憺たる実態が包み隠されてしまっているからです。
 
ただし、業績評価や経営レベルへの報告などを、時間帯別におこなうのは現実的ではありません。
 
そこで、1日以上の単位で実績を表す場合は、スライドの事例に示すように、「絶対値方式」による平均値を使います。
 
ただし、絶対値方式で目標達成するには、恒常的に安定稼働ができている成熟したセンターでなければ困難です。そうでない場合は、「加重平均方式」による実態に近い平均値を使ってください。
 
それぞれの計算式は次の通りです。

絶対値方式: 目標達成時間帯のコマ数÷全時間帯コマ数
 ※スライドの事例:(6コマ÷9コマ)×100=67%
 
加重平均方式: コール数比率で重み付けしたサービスレベル実績の合計÷コール数比率の合計
 ※スライドの事例:(((65%×0.201)+(70%×0.176)+・・・・・・+(90%×0.069)+(95%×0.066))
            ÷(0.201+0.176+・・・・・・+0.069+0.066))×100=77%


2. ファンの声で顧客満足度を評価 

世の中には、“おかげさまで顧客満足度ナンバーワンを獲得!”といった広告があふれています。
不思議なのは、同じ業界で競合企業である筈なのに、どの企業も“ナンバーワン”を叫んでいるケースが少なくないことです。
 
何故そんなことが起こるのでしょうか。
 
乱暴な言い方をするならば、顧客満足度の高評価を得るのは簡単だからです。
 
その“やり口”を二つ紹介しましょう。

​ひとつは、いわゆる顧客満足度調査のアンケートの質問数を20も30も設けたり、回答形式をほとんど記述式にするなど、とにかく“面倒で時間がかかる”ようにすることです。
一見、顧客満足を重視する企業との印象を受けそうですが、こんな面倒なアンケートに“普通の人”がしっかり回答してくれるでしょうか。
 
もうひとつは、自社のファン(高度利用者や上得意客など)を対象に、個人あるいはフォーカスグループのインタビューをおこなうことです。
ある企業では、社長自ら顧客を訪問し、その意見を伺うという活動をおこないました。その社長曰く「すべての顧客が我が社のコールセンターを高く評価している」だから「我が社のセンターは質が高い」というものでした。ところが、そのセンターは、外部の調査機関から「根本から改善を要する」という最低レベルの評価を受けていたのです。社長に改善施策を提案しようとしていたセンター長は頭を抱えてしまいました。社長の直接訪問にどんな顧客をお膳立てしたのか――推して知るべしでしょう。
 

3. 単純二択のポスト・チャット・サーベイ
 
ライブチャットの応対が完了すると、お約束のように、「私たちの対応に満足いただけましたか」と聞かれ、「満足」「不満足」の二者択一による回答を求められます。それがポスト・チャット・サーベイです。
 
その結果は、ほとんどすべてが、限りなく100%に近い満足度となります。
 
もし、あなたのセンターが90%を下回るようなら、極めて強い危機感を持ち、直ちにその原因を特定し、改善策を講じてください。

​なぜなら、ポスト・チャット・サーベイには、100%近い満足度が得られるという以下のような必然性があるからです。

  • ライブチャットはシンプルで正解のある問い合わせに使われること
  • ポスト・チャット・サーベイは応対が終了=顧客の用件が完了したときにおこなわれること
  • ライブチャットで完了できない問い合わせや不満足な顧客は、応対が終了する前にいなくなっていること
 
つまり、ポスト・チャット・サーベイを受けるタイミングでは、満足した顧客しか残っていないということです。
 
このことを踏まえて、単純二択のポスト・チャット・サーベイの結果をどう評価すべきか、どう扱うべきか、良く考えなければ、大きな勘違いをすることになるでしょう。


4. 稼働率は高いほど良い
 
エージェントの稼働率を、ホテルの客室稼働率や飛行機の座席稼働率などと混同してはいけません。
ホテルや飛行機の稼働率は、高ければ高いほど良いのですが、エージェントの稼働率は、高ければ高いほど、顧客サービスやエージェントの心身の状態の悪化を招きます。

​エージェントの稼働率が高いということは、具体的には次のような状態であることを表します。
 
コール数が増加する ⇒ エージェントが絶え間なく応答している ⇒ エージェントはトイレにも行けず、とにかく忙しい ⇒ 電話がつながりにくくなる ⇒ キューが溜まる ⇒ 平均応答時間が長くなる ⇒ サービスレベルが悪化する ⇒ 顧客はイライラする ⇒ 放棄が増える
 
その結果、顧客の不満が高まり、多くの顧客を失うことになります。
また、エージェントは疲労困憊します。その状況が常態化すると、エージェントの不満が高まり、バーンアウト(燃え尽き)を招き、最後は会社を去ることになります。
 
稼働率を重要な生産性評価指標と決め付け、その高さを評価するようなセンター管理者には、即刻退場を勧告します。ブラック化を推進してるのと同じことですから。

稼働率は、エージェントの忙しさや心身の状況を測る目安に過ぎません。そもそも、稼働率の数値を見ないと、それがわからないこと自体が、センター管理者として失格ですね。


5. 応答率でつながりやすさを評価
 
日本企業のコールセンターのガラパゴス状態の象徴である応答率。
いまだに、それが最重要KPIであると盲信するセンターが圧倒的多数であることは、世界の常識からすると、あまりにも恥ずかしいと言わざるを得ません。
 
普通の人は、30分待たされた挙句につながったコールセンターのことを、“つながりやすい”とは評価しません。
でも、応答率は30分待たせても、最終的につながればOKなのです。
応答率とは、「つながったか、つながらなかったか」を示すに過ぎないからです。
「応答率が高い=つながりやすい」と考えている方は、今すぐにその考えをあらためてください。
 
繰り返しますが、応答率でつながりやすさはわかりません。
したがって、応答率で顧客満足や顧客経験(CX)のケアなんてできません。
 
「当社のセンターのKPIは応答率です。そして、今年の最重要課題はCXの向上です。」というあなたの発言が、まったくつじつまの合わない“なんちゃって宣言”であることを自覚してください。
 
それ以前に、そもそも応答率という概念は、世界のコールセンターセンター・マネジメントの常識には存在しないことを知ってください。


6. 現場の声は顧客の声
 
「現場の声は顧客の声を映す鏡だ」などと真面目に言うセンター管理者は、ほとんど現場のことを知らない人に違いありません。おそらく、日頃、オペレーションの現場を歩いたこともなければ、エージェントと本音の会話を交わしたこともない人でしょう。
 
現場(エージェント)の声は顧客の声ではありません。
 
確かに、エージェントは社内で最も顧客に近い存在ですが、顧客とのコンタクトから生じるさまざまな労苦に直面するのもまた、エージェントです。
そのため、エージェントは、社内外に対する不平不満や被害者意識を持つことになります。
 
そんなエージェントが代弁する顧客の声には、彼/彼女たちの強いバイアスがかかっています。
 
現場を歩けばわかります。
多くのエージェントは、たった1件の顧客の苦情を、あたかもすべての顧客の苦情のように表現します(注2)。
 
センター管理者やマーケティング、あるいは経営者は、本当に顧客の声を活用したいのなら、エージェント任せにしてはいけません。
マーケターが、自分が手掛けたプロモーションの効果を確かめるために自らフィールドウォッチングをするのと同様に、顧客の声は自分の耳で聞くべきです。


7. ライブチャットの効果でコール数削減
 
ライブチャットを導入するコールセンターのほとんどが、「電話をチャットに置き換えてエージェント数とコストを減らす」ことを目的としています。
 
しかし、ライブチャットの導入によりコール数を減らすことはできません。
電話による顧客とのコミュニケーションを、ライブチャットに置き換えることはできないからです(注3)。
 
ライブチャット導入の本質的な目的は、チャットを好む新しい顧客や、チャットにフィットする新しいマーケットを獲得することにあります。つまり、顧客とのコンタクトは減るどころか増えることになります。このことは、こちらの記事 に書きました。
 
ところが、多くの場合、ライブチャットを導入するとコール数が減ります。
 
何故なら、問い合わせの起点となるWebサイトで、ライブチャットを利用するように誘導あるいは強制するからです。
これがWeb起点の顧客サービスの、企業側にとっての大きなメリットです。Webサイトの作り方ひとつで、顧客を思い通りに操ることができるのですから。
 
でも、これは、あくまでも企業側の恣意的な操作であり、顧客の選択ではありません。
つまり、コール数が減ったのではなく、減ったように見えるだけです。
 
もしかしたら、電話を好む顧客は不満を抱いているかもしれません。
ライブチャットでは埒が明かない問題を抱える顧客を憤慨させているかもしれません。
そんな顧客は、黙って競合他社へ乗り換えることになります。
 
ライブチャットは電話を置き換えるものではなく、電話と共存する(使い分ける)ツールであり、そこに顧客にとっての大きなメリットが生まれるのです。
 

8. 予測の正確性を誤差率で評価
 
コール数などの予測はセンター・マネジメントのはじめの一歩です。
 
それがなければ、コールセンターの活動は何も始まらないし、その精度いかんで、コールセンターのパフォーマンスに大きな影響を与えることになります。
 
したがって、「フォーキャスト正確性」はセンター管理者にとっての必須のKPIのひとつです。
 
ところが、大半のセンター管理者が、その正しい測り方を知らず、予測と実績の誤差の割合(これを「誤差率」と呼びます)で見てしまいます。
 
スライドの事例をご覧ください。フォーキャスト正確性の目標値は5%とすることが多いので、誤差率-3.4%という結果を“精度が高い予測”と評価してしまいます。
ところが、この-3.4%は、時間帯別に見た場合の、目標から大きく乖離した実績が、“平均のマジック”によって相殺されてしまっており、実態を表していません。
 
時間帯ごとの正確性は誤差率で構いませんが、1日以上の期間で見る場合は、「絶対誤差率」を使います。
 
絶対誤差率とは、実績値から正負の符号を取り去った絶対値を%で表したもので、その1日平均のことを「平均絶対誤差率」(MAPE)と呼びます。
 
絶対誤差率の計算式は、次の通りです。
 
絶対誤差率=(|実績―予測|÷実績)×100
 ※||は||内の数値が絶対値であることを示します。
 
また、スライドのもう一つの事例では、予測のバラツキを評価する「標準偏差」(数値が小さいほど精度が高い)と、予測と実績の関係性の強さを表す「相関係数」(1.0に近いほど精度が高い)を紹介しています。
 
左右の表を1日平均の誤差率で比べると、右表の3.5%に対して-0.6%の左表の方が精度が高いように見えます。
しかし、時間帯別に見ると、右表の方がバラツキが少ないことがわかります。これを標準偏差と相関係数で見るならば、いずれも右表の方が精度が高いという結果になります。
 
このように、正しい方法を知らないことは、真逆の評価をしてしまうことになるので注意が必要です。
 
 
以上、8つの禁じ手に対する簡単な説明をしましたが、これらはすべてセンター・マネジメントの基本です。
​さらに詳しいことは、『コールセンター・マネジメントの教科書』で解説していますのでご覧ください。


注1: サービスレベルが登場する以前、世界中のコールセンターは、放棄率と平均応答時間の二つを最重要評価指標としていました。しかし、いずれも平均値のため、1日単位で見た場合に、目標を下回った時間帯の実績が、目標を上回った時間帯の実績に相殺されてしまい、真のサービスの実態が見えなくなってしまうという反省から生まれたのがサービスレベルです。したがって、サービスレベルは時間帯ごとの実績を評価するのがあるべき姿なのです。
注2: もちろん、すべてのエージェントが、あるいは、すべてのケースにおいてバイアスがかかるわけではありません。
注3: 単純定型的で正解のある問い合わせなど、ライブチャットにフィットするものは置き換えることが可能です。



熊澤伸宏(文/Vol.25)

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<![CDATA[ライブチャットの正しい使い方――5つの鉄則(ライブチャットの運営シリーズ 最終回)]]>Mon, 06 May 2019 14:49:31 GMThttp://cc-kyokasho.jp/1246712521125122084025991/-5
これまで3回にわたり、ライブチャットの運営の勘どころについて述べてきました。
今回は、まだまだ誤解の多いライブチャットの運営を“正しく”おこなうために、必ず理解しておきたい鉄則を6つにまとめてシリーズの締めくくりとします。
 
 
鉄則その1――ライブチャットは電話を減らすためのものではない 

多くのコールセンターが、ライブチャットの導入により“電話を減らす” ことを目的としています。
電話による問い合わせをライブチャットに置き換える ⇒ 電話のエージェント数を減らす ⇒ コストを削減する という理屈なのでしょうが、これが誤りの第一歩です。
 
ライブチャットを導入する本当の目的は、新たな顧客層を獲得することです。
 
新たな顧客層とは、「ミレニアル世代」「デジタルネイティブ」などと呼ばれる若年層のことです。

彼らは電話やメールよりもライブチャットを好みます。その方が簡単で早く済むからです。
 
新しい顧客を増やすわけですから、顧客とのコンタクトは減るどころか増えるのです。
つまり、これまで電話やメールをメインに使ってきたコールセンターがライブチャットを導入することで、彼らとのコンタクトの機会を増やすことができるのです。その結果、セールスの拡大やサービスの強化につながります。
これがライブチャット導入の本質です。
 
ちなみに、“チャットの導入で電話が減った”という話を耳にします。
それは、企業の側が、顧客に電話よりもチャットを使うよう誘導、あるいは強制するからです。
顧客に選択肢を与えずに、“チャットが支持された”“チャットが電話の代替を果たしている”などと評価するのは、あまりに滑稽と言わざるを得ません。
 
 
鉄則その2――むしろ電話よりも高い 

 “チャットは同時セッションができるからエージェント数を減らせることができ、その分人件費が安く済む”と言われますが、それはカスタマーサポート系の一部に限った話であり、大半の、特にカスタマーサービス系のコールセンターには当てはまりません。
 
なぜなら、ライブチャットの平均処理時間(AHT)は、電話よりも長くなるからです。
ただでさえ電話よりも長いのに、同時セッションにより、AHTはさらに長くなります。同時セッションが2件の場合、一般的にAHTは電話の2倍の長さになります。
 
単純に考えれば、同時セッションが2件でAHTが2倍ということは、結局のところ電話もライブチャットも必要なリソース(エージェント数や人件費)は変わらないことになります。
 
また、同時セッションが増えるとエラーが増すなどして、顧客満足が低下することもわかっています。
それをリカバーするための対策を講じる必要があり、そのための追加のコストが必要となります。
そのことも踏まえて、カスタマーサービス系のセンターでは同時セッションは最大2件まで、カスタマーサポート系のセンターでは3件までとするのが一般的です。
 
さらに、単純定型的な問い合わせが、電話からライブチャットへシフトすることにより、電話には高度で難解、あるいは時間のかかる問い合わせが集中するようになります。そのために、電話のエージェントのトレーニングやナレッジベースの強化、優秀な人材の確保など、新たな投資が必要になります。
 
これらを考え合わせると、ライブチャットの導入は、コストの増加圧力を高めると考えるべきです。
 
※鉄則その2については、ライブチャットの運営シリーズ第2回「本当に電話はチャットより安いのか」も合わせてご覧ください。
 
 
鉄則その3――置き換えるのでなく使い分ける 

電話/人/コストを減らすというのは、電話をライブチャットに“置き換える”という発想です。
 
が、それができるのは、“正解を回答する”ことを目的としたカスタマーサポート系の単純定型的な問い合わせに限られます。顧客と“コミュニケーションする”ことを目的としたカスタマーサービス系の問い合わせをライブチャットに置き換えるのは極めて困難です。
 
これは、両者のコミュニケーションツールとしての性格や使い方が異なることを意味します。それぞれを好む顧客層も異なります。タイプや顧客層が異なるのですから、両者を置き換えることはできないということです。
 
つまり、置き換えるのでなく、“使い分ける”と考えるべきなのです。
 
ライブチャットは、“正解を回答する”ことを目的としたカスタマーサポート系の単純定型的な問い合わせにフィットし、その手軽さやスピーディーさから若年層に好まれます。
電話は、“顧客とコミュニケーションする”ことを目的としたカスタマーサービス系の問い合わせに最適なのは言うまでもありません。
 
ただし、ライブチャットがカスタマーサービス系のコールセンターでまったく使えないというわけではありません。
メインのツールにはなり得ませんが、テキストや画像、URLの送信など、電話を補完するツールとしては大変有効に機能します。
 
 
鉄則その4――単純二択のポスト・チャット・サーベイで満足度は測れない 

ライブチャットの運営シリーズ第1回「チャットの測定指標」で、ライブチャットのマネジメントに必要な24の指標を示しました。
そのうち経営レベルで最も重要と言えるのが、顧客満足度(C-SAT)でしょう。
 
おそらく、ライブチャットを利用する企業のほとんどが、C-SATを見ていると思われます。
というのは、ライブチャットは「ポスト・チャット・サーベイ」(問い合わせ完了後におこなうアンケート)が大変やりやすく、ほとんどすべてのライブチャット・アプリにその機能が備わっているからです。
 
そして、そのほとんどの結果が、満足度90%を優に上回っています。そのため、どの企業もその結果を喧伝することになります(どのサイトを見ても満足度が高いのはそのためです)。
 
そうなるのは、ライブチャット・アプリのアンケートは、そのほとんどが、Yes/Noの単純二択式だからです。
しかし、その方法で得られた回答をもって顧客満足度を評価するのは、あまりに乱暴です。
 
前述のようなライブチャットの性格などを考えれば、単純二択の設問で得られる回答は、用件が“完了したか、しなかったか”の結果に過ぎないと解釈すべきです。
さらに、ライブチャットの特徴として、不満足な顧客はライブチャットの応対が完了する前に離脱しており、ポスト・チャット・サーベイでは、不満足度が反映されないことも認識すべきです。
 
 
鉄則その5――ライブチャットはサービスレベル・コンタクト 

ライブチャットは「サービスレベル・コンタクト」(注1)です。
 
テキストによるコミュニケーションという見かけから、メールと同類とみなし、その運営、特にワークフォース・マネジメントをメールと同じく「レスポンスタイム・コンタクト」(注2)としておこなうセンターが大半と言ってよいほど、理解が不足しています。
 
それでも日本では、まだライブチャットのボリュームが少ないため、結果オーライの状況にありますが、今後のボリューム増を考えると、このままでは立ち行かなくなるのは火を見るより明らかです。
 
昨年おこなわれた米国のベンチマーク調査では、顧客によるチャット・リクエストの何と21%に企業からの応答がないという悲惨な状況が浮き彫りになりました。
実は日本でも、いくつかの大型センターで、“つながらないチャット窓口”が出現しています。
 
かつての電話と同じことを繰り返さないよう、サービスレベル・コンタクトによるマネジメントの理解と実践が急がれます。
 
※サービスレベル・コンタクトによる要員数算出については、ライブチャットの運営シリーズ第3回「ライブチャットのエージェント数を算出する」 をご覧ください。



注1: ランダム着信、同期コミュニケーション、即時処理、待機時間の発生、処理の重なりが発生といった性格を持つコンタクトタイプのこと。ワークロード人数よりも多くの要員数が必要で、アーランC式により人数を算出する
注2: 非同期コミュニケーション、連続処理という性格を持ち、コールセンターによるコントロールが可能。ワークロード人数と要員数が等しい

 
 
 
熊澤伸宏(文/Vol.24)
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<![CDATA[ライブチャットのエージェント数を算出する(ライブチャットの運営シリーズ 第3回)]]>Sun, 31 Mar 2019 14:50:16 GMThttp://cc-kyokasho.jp/1246712521125122084025991/-3
ライブチャットの運営シリーズ 3回目は、ライブチャットのエージェント数の算出について解説します。
 
シリーズ1回目で述べたように、ライブチャットの運営は、そのノウハウや方法論が世界的にみても未だ確立していません。
その最たるものが、ワークフォース・プランニング、つまりエージェント数の算出です。
 
同時セッションの存在やAHT(平均処理時間)の測定が困難なことがそう言わしめているのですが、だからといって、いつまでもアバウトなエージェント配置のままで済むはずがありません。
 
そこで、コールセンターの教科書プロジェクトでは、ライブチャットのエージェント数の算出のための考え方をまとめ、その算出モデルをここに公開します。
 
 
ライブチャットのコンタクト数を予測する
 
エージェント数を算出するためには、その元となるライブチャットのコンタクト数の予測が必要です。
 
ライブチャットをどのように運用しているかによって、発生の要因となる情報やデータが企業によって異なることを除けば、電話と同様に、回帰分析や時系列分析などの手法を使ってコンタクト数の予測ができます。
具体的には、『コールセンター・マネジメントの教科書』第3章や、Bizコンパスの連載記事「世界の先進コールセンターが実践する業務量予測法とは」をご覧ください。
 
 
ライブチャットはサービスレベル・コンタクト
 
多くの人が、ライブチャットを「レスポンスタイム・コンタクト」(注1)と誤解しています。
おそらく、ライブチャットがテキストによるコミュニケーションであり、メールに似ていることによるものでしょう。
 
ライブチャットは、明確に「サービスレベル・コンタクト」です。
 
なぜなら、ライブチャットに対する顧客の最大の期待は、「早くて簡単であること」だからです。
おそらく顧客はライブチャットに対して、電話以上に “待たされる”という発想はないでしょう。
 
したがって、ライブチャットのオペレーションの第一義的な使命は、「受信したライブチャットに迅速に応答する」ことであり、電話と同様にサービスレベルを設定して、アーランC式によりエージェント数を算出します。
 
では、ライブチャットのサービスレベルはどれくらいに設定すればよいでしょうか。
 
現状では日本にはその事例が皆無なので、欧米の例を見てみましょう。
 
「コールセンターの教科書コラム」の昨年の記事「閲覧注意!サービスレベルの標準値」で紹介した、英国のオンライン・コールセンター専門誌の発表(注2)によると、ライブチャットのサービスレベルは、「80% of Live Chat answered within 40 second」、つまり受信したライブチャットの80%は40秒以内に応答するというものでした。
 
日本の場合、現状では一部の企業を除きライブチャットのボリュームが少ないため、大半が「受信=即応答」の状況にあります。
したがって、あえて80/40に下げる必要はないでしょうが、今後のライブチャットのコンタクト数の予測を見て、自社にとって適切なサービスレベルを設定してください。
 
 
同時セッション数を設定し、処理ユニット数を求める
 
アーランC式でエージェント数を算出する際に考慮しなければならないのが、同時セッション数(CNC)です。
 
必要なのは、ライブチャットのシステムにあらかじめ設定している「最大同時セッション数」(Maximum CNC)ではなく、オペレーションの実績に基づく「平均同時セッション数」(Average CNC)です。
 
平均同時セッション数もライブチャットの運用の仕方によってさまざまな影響を受けるため、きっちり正確に計算するのは困難ですが、通常は下記の計算式により、エージェント数の算出に使えるレベルの平均同時セッション数を求めることができます。
「合計ライブチャット処理時間」(Total Live Chat Handle Time)は、特定の時間帯に処理したすべてのライブチャットの応対時間(電話の通話時間に相当)、保留時間(ライブチャット応対中のサイレントやインアクティブなどの時間)、後処理時間の合計時間です。
言い換えるなら、特定の時間帯に処理したすべてのライブチャットのAHT(平均処理時間)の合計ということになります。
 
「合計ライブチャット・エンゲージメント時間」(Total Live Chat Engagement Hours)は、特定の時間帯にエージェントがライブチャットのオペレーションに従事した合計時間です。
 
アーランC式の計算には、コンタクト数が必須ですが、チャットの場合、同時セッションを考慮した件数であることが必要です。

それが「処理ユニット数」で、同時に処理したライブチャットのセッションを1つにまとめた“みなしコンタクト数”のようなイメージで、下記の計算式により求めることができます。
アーランC式でつkあうた使うために、データの単位は1時間とします。
処理時間をどう測るか
 
アーランC式の計算要素として不可欠な処理時間(平均処理時間または合計処理時間)ですが、同時セッションをはじめ、タイムアウト、サイレント、フェイルオーバーなど(それぞれの定義は前回および前々回の記事をご覧ください)の存在が、正確な測定を困難にしています。
 
現状のライブチャットのオペレーション・システムは、1つひとつのセッションごとにタイムアウトなどの要因を考慮した処理時間をレポートするまでには至っていません。
 
そのような現状において、少しでも実態に近い処理時間を測定するためには、タイムアウトなどの発生や終了などのタイミングと対処方法をすべてルール化しておくことが必要です。
例えば、最後のアクションから5分経過してもサイレント状態の場合はセッションを終了するといったことです。
 
すべてのセッションを統一のルールに基づいて運用することで、システムからレポートされる処理時間を、単なる数値でなく“データ”としてエージェント数の算出に利用することができます。

そうして正確な処理時間が得られたならば、平均処理時間にコンタクト数を乗じて合計処理時間を求め、それを処理ユニット数で割って「平均ユニット処理時間」を算出します。処理ユニット数1件あたりの平均処理時間というイメージです。
 
チャット・コンタクトのエージェント数算出モデルでは、通常の平均処理時間に替わって、この「平均ユニット処理時間」を使います。

ライブチャットのエージェント数算出モデル
 
以上のようにして求めたサービスレベルや処理時間などの要素に基づく、アーランC式によるライブチャットのエージェント数算出モデルを以下に示します。
この算出モデルにより求めたエージェント数が“完ぺきに正確”というわけにはいきませんが、現状のライブチャットのオペレーションをめぐるさまざまな環境や条件のもとでは、これが最も有効に利用できるツールです。
 
 
※筆者が講師を務める「コールセンターの業務設計講座 ~リソース・マネジメント編~」では、ライブチャットの測定指標やエージェント数の算出方法に関する詳しい解説をおこないます。上記の算出モデルのExcelワークシートを入手することができます。ご興味のある方はぜひご参加ください。
​次回は5月30日(木)に大阪(マイドームおおさか)で開催します。詳細はこちら


注1: メール、Web問い合わせフォーム、Fax、レターなどのように、処理の形態が連続作業であり、ワークロード人数算出モデルによる要員算出をおこなうコンタクトのこと
注2: Call Centre Helper “How to Design a Contact Centre for Important Customers” 2018


熊澤伸宏(文/Vol.23)


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<![CDATA[本当にチャットは電話より安いのか?(ライブチャットの運営シリーズ 第2回)]]>Sat, 02 Mar 2019 16:40:08 GMThttp://cc-kyokasho.jp/1246712521125122084025991/6719315
“チャットは電話よりコストが安い”と言われます。
 
本当にそうなのでしょうか?
 
日本よりも数年早くチャットが普及した欧米のコールセンターでは、3~4年前にこの種の議論や検証が盛んにおこなわれ、一定の共通認識が出来上がっています。
 
ところが日本にはその知見がほとんど紹介されず、未だに多くの企業が “コスト削減” を目的としてチャットの導入を進めています。
 
誤った期待と使い方によって、せっかくのチャットの導入が失敗とならないよう、欧米の知見を紹介しながら、チャットのオペレーションの本質や考え方などについて考察します。
ぜひ、前回の記事「チャットの測定指標」もあわせてお読みください。
 
なお、ここで言うチャットとは「ライブチャット」のことです。
AIと並んで大流行の「チャットボット」は、日本ではライブチャットと同類のものとして語られますが、両者はまったく異なるツールですから混同しないようにしましょう。


チャットの方が安いと言われる理由と条件
 
“チャットの方が電話より安い”と言われるのは、チャットの場合、1人のエージェントが同時に複数のチャットの応対をすることができる――その分、チャットのオペレーションに必要なリソース(エージェント数)が少なくて済む――という理由からです。
 
このことに、コストや人員抑制の切り札として、採用難に喘ぐ日本のコールセンターが飛びついたというわけです。
 
確かに「同時セッション」(同時に複数のチャットの応対をすること)は、電話にはないチャットの大きな特徴です。しかし、それが額面通りの効果を発揮するのは、以下のようなシンプルな問い合わせの場合に限られます。
 
     顧客の問い合わせ:「ウインドウを閉じる方法を教えてください」
     エージェントの回答:「右上のX印を押してください」
 
この例のように、エージェントがあれこれ考える必要がなく、即時に明確に回答できるシンプルな問い合わせであれば、定型文のコピペで済ませるなど短時間で機械的に処理することも可能です。
だからこそ同時セッションができるのであり、このような性格から、チャットは機器の操作方法やアプリの使い方といった「カスタマーサポート系」のコールセンターで効果を発揮してきたのです。
 
このことが、チャット・アプリのプロバイダーやメディアにより、チャット導入のメリットとして喧伝されてきたというわけです。
 

同時セッションにより、AHT(平均処理時間)が増加する
 
同時セッションは、以下の理由によりチャットのAHTの増加をもたらします。

  • 言語化と文章化に時間がかかる: 電話の場合、頭に浮かんだ考えや思いを言語化して音声として発することで会話ができますが、チャットの場合、これに「文章化する」というプロセスが加わるため、その分、AHTが長くなります。
 
  • サイレントやインアクティブが発生する: チャットの場合、相手のチャット会話を読んでいる、こちらの会話を入力している、顧客がチャットの応対の場から離れる、エージェントが他の顧客のチャットの応対をしているなど、さまざまな理由により「サイレント」(沈黙)や「インアクティブ」(中断)が生じます。相手の状況がわからないことにより、一定の待機状態が維持されることでAHTが長くなります。
 
  • 顧客の応答が遅い: 顧客にとってチャットは、電話のように「会話をする(すぐに応える)」というプレッシャーがないため、応答が遅くなります。
 
  • 頭の切り換えが必要: 例えば、エージェントが2件の同時セッションをおこなっている場合、一方のセッションから他方に移る際に、内容を正確に把握したり思い出したりするための「頭の切り換え」の時間が必要です。
 
上述のカスタマーサポート系のコールセンターの問い合わせの場合は、内容がシンプルなためAHTの増加の影響は少なくて済み、その結果、同時セッションによるエージェント数の抑制がコスト削減効果をもたらします。
 
ところが、内容が多種多様で、「回答する」ことよりも顧客と「コミュニケーションする」ことが求められる「カスタマーサービス系」のコールセンターでは、事情が異なります。
 
欧米のコールセンターの経験値や調査によると、カスタマーサービス系のコールセンターでは、同時セッション数が2件の場合、AHTが電話の2倍になるというのが一般的な認識となっています。
3件、4件と同時セッション数が増えれば、AHTの増加の度合いはさらに高まります。
 
これは、AHTが倍増することで同時セッションによるエージェント数の抑制効果が失われることを意味します。
 

同時セッションを増やすと顧客満足が低下する
 
同時セッションは、AHTだけでなく顧客満足にも大きな影響を及ぼします。
 
欧米の多数のコールセンター・マネージャーは、顧客満足を損なわない同時セッション数の上限を、2または3件と考えています(注1)。
これは、同時セッション数が2または3件を超えると顧客満足が低下すると言い換えることができます。

なお、2件とするセンターの大半はカスタマーサービス系で、3件とするのはカスタマーサポート系が多くを占めているのはわかりやすいところです。
 
企業側としては、同時セッション数を増やしてコスト削減効果を高めたいところではありますが、それによって顧客満足の低下を招いては元も子もありません。
欧米でも、チャット導入の初期は同時セッション数の増加に腐心していましたが、現在では顧客満足が判断基準となっています。
 
その結果、カスタマーサービス系では2件、カスタマーサポート系では3件とするのが、現状の共通認識となっています。
 
ちなみに英語圏でこうなのですから、日本語を使う国内コールセンターの場合は、AHTの観点からも顧客満足の観点からも、より厳しい見方をする必要がありそうです。
 

チャットの導入は電話を減らすことに非ず
 
チャットを導入しようとするコールセンターの多くが「電話を減らしてコストを削減する」ことを目的として掲げますが、それは大きな誤りです。
なぜなら、そう考えるコールセンターは、電話を好む顧客層とチャットを好む顧客層が異なるという認識を欠いているからです。
 
チャットの導入により電話が減ったように見えるのは、企業が顧客にチャットへのシフトを強制するからです。
それによって、電話を好む顧客は黙って去っていきます。いくらかの顧客はやむなくチャットを使うものの、決して積極的ではありません。その多くは満足度が下がっています。

もちろん、アプリの操作方法やクレジットカードの残高照会、通販の送料確認のようなシンプルな問い合わせの場合は、多くの顧客が電話よりもチャットを使うようになるでしょう。
しかし、それによって電話には高度で難解、あるいは相談型の時間がかかる問い合わせが集中するようになり、エージェントのトレーニングやナレッジベースの強化、質の高い人財の確保などのための新たな投資やコストの増加が必要となります。
 
このような本質を見逃して、表面的なコール数の減少を評価するのは、あまりに短絡的と言わざるを得ません。
 
よく知られているように、チャットを好んで利用するのは「ミレニアル世代」「デジタルネイティブ」などと呼ばれる若年層です。
チャットの導入に積極的に反応するのはこの世代であり、彼らの参入は、それまでコンタクトのなかった新しい顧客層の開拓をもたらすことになります。また、オムニチャネルの活性化にも貢献します。
 
これがチャット導入のビジネス上の本質的な目的であり、コスト削減とするにはかなりの違和感があることに気付いていただけることでしょう。
 
 
以上、AHT、顧客満足、顧客層という3つの観点から、チャットのコストや目的について考察をおこないました。
 
「人手とコストがかかる電話から、安くて簡単に済むチャットにしたい」といった安易な考えでは、決して目論見通りに行かないであろうことを、ご理解いただけたでしょうか。

注1: 例えば、Call Centre Helper Webinar Poll –Best Practices for Voice, Email and Webchat. September 2015によれば、顧客満足を損なわない同時セッション数は2件(45%)と3件(39%)で大半を占め、4件超は7%に過ぎない


※「コールセンターの業務設計講座 ~リソース・マネジメント編~」では、ライブチャットの測定指標やエージェント数の算出方法に関する詳しい解説をおこなっています。ご興味のある方はぜひご参加ください。
​次回は3月26日に東京(御茶ノ水)で開催します。詳細はこちら



熊澤伸宏(文/Vol.22)


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