いまだに多くの(特に日本企業の場合は大半の)コールセンターが、「3密」環境のままオフィスでの業務を強行しているのは、あきれるばかりです。 そんな中、今週になって、従業員と業界双方の声がメディアに発信され始めました。 従業員の声は、言うまでもなく感染に対する恐怖とテレワーク実施などの改善要求、そして企業に対する強い不信感です。下記の記事がその実態をよく表しています。 コールセンターの「極限3密」苛酷実態、非正規雇用の不安が追い打ち 一方の業界の声は、総じて言えば、オフィスでの業務強行を前提に、テレワークしないことを正当化する論調となっています。その姿勢や考えがあまりに残念で、憤りすら覚えるのが正直なところです。 彼らが、その第一の理由として声高に挙げるのが「個人情報」です。 個人情報に自宅からアクセスするわけにはいかないということのようですが、もし「個人情報保護法」を念頭に置いてそのようなことを言っているのであれば、それは同法の主旨をまったく理解していない、極めてナンセンスな言い分に過ぎません。 個人情報保護法は、個人情報利用禁止法ではありません。個人情報を社外で扱ってはならないなどという条文はどこにもありません。 自宅でアクセスすることが良い・悪いではなく、個人情報をどこで取り扱おうが、個人情報取扱事業者として法に定められた安全管理措置をしっかり講じているかどうかが本筋です。それができていれば、何の問題もなくテレワークができるのです。 つまり、自分たちが安全管理措置を怠っていることが本当の理由なのに、「個人情報だからできない」と論点をすり替えて言い逃れや責任転嫁をしているに過ぎないのです。 また、本当に理解不足で「個人情報だからダメ」と思い込んでいる論外な管理者の存在や、「契約社員にアクセスさせるわけにいかない」といったあからさまで理解不能な非正規社員差別まで見られるのは、全く以って何をか言わんやです。 いずれにしても、個人情報は、コールセンターがテレワークをしない理由はおろか、言い訳にもならないのです。 個人情報の他には、「労務管理(おそらくエージェントのケアやコミュニケーションのことだと思いますが)ができない」「自宅で受電する仕組みがない」とか、「自宅の環境がエージェント業務をおこなうのに適さない」というのが、3密強行センターに共通の言い分です。 エージェントのケアについては、AIをはじめとするITツールの登場で、一昔前に比べて、はるかにリアルに近いコミュニケーションが、さまざまな方法で取れるようになっているはずです。 受電については、クラウドの登場で、これも一昔前に比べてはるかに安価で手軽にテレワークができるようになっています。 ところが、つい先日までは、「電話は古い」「人に頼る時代ではない」などと決め付けて、時も場所も人も選ばない今どきのITツールに業界を挙げて大騒ぎしていたはずなのに、手のひらを返すように、電話やオフィスでのリアルありき一色になっているのは一体どういうことでしょう。 今こそ、それらITツールを駆使して、テレワークを実践する好機なのではないでしょうか。 また、エージェントの自宅の環境がさまざまであるのは当たり前です。 電話業務が難しければ、チャットやメールをアサインしてください。それも難しければ、顧客応対ではない業務(この機会にできることがいくらでもあるはずです)を与えてください。 在宅により保育所に預けられない場合は、育児をしながらの業務を認めてください。あるいは、自転車か徒歩で通えるサテライトオフィス(ホテルや貸会議室など)を用意すれば、保育所を利用でき、安心して業務をおこなうことができます。 いろいろあるから「できない」「やらない」のでなく、どうすればできるかを考えてください。 そしてもうひとつ、コールセンターを「社会的ライフライン」とするのは言い過ぎです。 もちろんそれに相当するコールセンターもたくさんあります。 しかし、そうではないビジネスの方が多いのは事実でしょう。 ただし、「既存の顧客に対するケア」は、どんなビジネスでも必要であり守らねばなりません。 だからといって、それを「電話で」「オフィスで」やらなければならない理由はありません。 つまり、単純かつ十把一からげに「コールセンターは重要」と決め付けて、「だからテレワークできない」とする論理は成り立たないということです。 業務の内容、顧客、チャネルなど、多くの選択肢を切り分けて、その必要性や優先度を考えるべきです。 とにかく今、センター長がすべきことは、一刻も早くオフィスを閉鎖して、通勤をなくすことです。 重要なのは、それが自社のためだけでなく、社会に対して果たすべき使命であるということです。 社員として企業の目的達成に努めるように、国全体の目的達成に貢献してください。 完全テレワークへの移行をPRした保険会社のコールセンターが、あたかも先進事例のように採り上げられていますが、タイミングも内容も、それに勝る事例はいくらでもあります。 オフィス環境にしろ、情報の安全管理措置にしろ、エージェントのケアにしろ、業務プロセスにしろ、普段から着実な運営をおこなっているセンターは、決して大騒ぎすることなく、さっさとテレワーク化しています。保険会社の例は、決して例外ではないのです。 「そんなこと言ったって、今すぐできるわけないだろ」とおっしゃいますが、そんなことは当たり前です。 さっさとテレワーク化したセンターだって、多くの犠牲や不自由を抱えながらやっています。 「できない理由」を並べ立て思考停止に陥るのか、「STAY HOME」という目的達成のためにチャレンジするのかの違いです。 目的は明確なのですから、もう選択肢はありません。 今、センター長に求められるのは「やるしかない!」これのみです。
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