コールセンターの“チャットシフト”が加速しています。 顧客とのコミュニケーション起点のWebサイト化、オムニチャネルの進展などによって、もはやチャット無しには顧客の支持を得られない状況になってきたからです。 しかしながら、その運営手法やノウハウが確立されていない(日本だけでなく世界的に)ため、チャットのオペレーションの現場は、意図してコントロールされている状態とはとても言い難いのが現実です。 とりわけ、科学的管理の実践に不可欠なKPIなどの測定指標が定まっていないことが、その大きな理由として挙げられるでしょう。 そこで、コールセンターの教科書プロジェクトでは、ライブチャット(注1)の業績評価、運営管理のための測定指標を整理し、代表的な24の指標にまとめました。 以下ではまず、ライブチャットの特徴を挙げ、そのうえでライブチャットに特徴的かつ代表的ないくつかの指標について説明し、最後に24の指標を紹介します。 ライブチャットの特徴 ライブチャットは、「ランダム着信」「即時処理」「キューイング」「ワークロードをコントロールできない」といった環境から、「サービスレベルコンタクト」のひとつであり、電話(インバウンドコール)に似ています。 しかし、以下に示すようなライブチャット特有のユニークな特徴があることで、電話のマネジメント手法をそのまま流用することができません。
最大のニーズは「簡単で速いこと」 ライブチャットの利用者の主役は「ミレニアル世代」「デジタルネイティブ」などと呼ばれる若年層です。 電話やメールを敬遠し、LINEなどのインスタントメッセージングをコミュニケーションのメインとする彼らは、企業とのコンタクトにおいても、最も簡便で即時の回答が期待できるライブチャットを最も好みます。 したがって、「迅速性」と「簡便さ」が担保できなければ、途端に彼らの支持を失うことになります。 となると、ライブチャットの導入によって「ミレニアル世代」の新しい顧客層の獲得を目論んでいた企業の思惑も外れてしまいます。 そのため、企業は「迅速性」を担保できるオペレーションの態勢を整え、「簡便さ」を提供できるサイトの機能強化を図ります。 そして、それらのパフォーマンスをモニターするための指標として、「平均初回レスポンス時間」(Average First Response Time; FRT)や「初回チャットコンタクト完了率」(First Chat Contact Resolution; FCR)および「サービスレベル」(Service Level; SL)で「迅速性」を管理します。 「FRT」は電話でいうところの「平均応答時間」(Average Speed of Answer; ASA)に相当します。 「FCR」と「SL」は電話でおなじみの指標と同じです。 また、「簡便さ」を評価するために「顧客努力指標」(Customer Effort Score; CES)を用います。 やっかいな「同時セッション数」と「平均処理時間」 「同時セッション数」(Chat Concurrency; CNC)はライブチャットの最大の特徴と言えるでしょう。 これがあることで、エージェント数の計算に、単純に「アーラン式」を使うことができません。 「CNC」をきっちり正確に測定するのは困難ですが、通常は以下の計算式により、エージェント数の算出に使えるレベルのCNCを求めることができます。 平均同時セッション数=合計ライブチャット処理時間÷合計チャットオペレーション時間 ライブチャットの「平均処理時間」(AHT)が電話の2倍の長さになるのは、「CNC」の影響です。 また、「ドロップ」「タイムアウト」の発生も、「AHT」を長くする要因となり、「AHT」の予測をますます困難なものとします。 このように、計算や予測が困難な「CNC」と「AHT」ですが、いずれもエージェント数の算出のキーとなる指標であるのが、頭の痛いところです。 ライブチャット独自の運営指標 リアルタイム・マネジメントやワークフォース・マネジメントに使用するライブチャット独自の運営指標として、以下のようなものがあります。 これらは、ライブチャットの運営の仕方によって必要性が異なります。自センターのニーズに合わせて使用しましょう。
これら6つの独自指標を含めた全部で24の測定指標を下表に示します。 この中で、上記の説明にない指標の定義や使い方などは、電話(インバウンド・コンタクト)の場合と同様とお考えください。それらの詳細がお知りになりたい方は、『コールセンター・マネジメントの教科書』第6章をご覧ください。 ※この記事の内容は、2020年5月18日付のコラム「ライブチャットの測定指標(KPI)とパフォーマンスレポート」にて更新されました。
注1: 「チャットボット」と区別するために、欧米ではエージェントによるチャットを「ライブチャット」と表記するのがほとんど。「Webチャット」とする場合もあるが極めてまれ。
熊澤伸宏(文/Vol.21)
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