この記事は、2021年4月23日に開催された『クラウドで実現する最新のコールセンターシステム オンラインセミナー』に登壇した熊澤伸宏の講演のトランスクリプトを若干編集したものです。
こちらのページから、この講演のスライドおよび動画にアクセスできます。 コールセンターにとって、トレーニングは最も重要な取り組みの一つであることに議論の余地はないでしょう。 トレーニングが成功するためには、戦略、育成計画、予算、設備、プログラムや教材、トレーナー、そして時間といった要素が必要です(スライド4ページ参照)。 これらの中で、今日は「時間」にフォーカスして考えたいと思います。 というのは、それほど重要なトレーニングであるにもかかわらず、質量ともにそれを満足に実施できているセンターは非常に少ないのですが、その最大の理由が、「時間」なのです。 ヒト、モノ、カネ――つまり上記のトレーニング成功の要素――がいくら揃っていても、「時間」がなければ何もできないからです(スライド5ページ参照)。 では、どうして「時間」がないのでしょうか。 実はそこには明確な原因があります。 それが、「シュリンケージを考慮しない要員計画」です。 では、この「シュリンケージ」とは何でしょうか。 これは、コールセンターのオペレーションに必要な時間を表したものです(スライド6ページ参照)。 まず、エージェントが「出社している時間」と「出社していない時間」に分かれます。 出社していない時間とは、休暇、欠勤、遅刻早退といったことです。 出社している時間は、「オペレーション時間」と「非オペレーション時間」に分かれます。 「オペレーション時間」は「通話時間」や「後処理時間」「離席時間」などから構成される、エージェントの本業である顧客応対に従事している時間のことです。この時間のことを「ベース時間」と呼びます。 また、エージェントは、本業であるベース時間の他に、多くの時間を費やしています。 それが「非オペレーション時間」であり、休憩、ミーティング、トレーニング、事務処理などから構成されます。 この「非オペレーション時間」に「出社していない時間」を含めた、エージェントの本業以外の時間のことを「シュリンケージ」と呼びます。 つまり、この「シュリンケージ」のことを考えずに、ベース時間だけで物事を考える(要員計画を立てる)から、ミーティングやトレーニングの時間が取れないのは当然です。 次に、エージェント数の3層構造について、例を挙げて説明します(スライド7ページ参照)。 例えば、1時間に500件、1件あたりの平均処理時間が360秒の業務量の場合、一般事務系の仕事であれば、必要な人数は50人です。 しかし、コールセンター、特に電話の場合は50人では足りません。なぜなら、電話はランダム(不規則)に着信するからです。 そのことを踏まえて、サービスレベルの目標を80%/20秒と設定するならば、50人に7人を加えた合計57人が必要となります。これが先ほどの「ベース時間」に必要な人数であり、その人数のことを「ベースエージェント数」と言います。 しかし、この57人だけではコールセンターのオペレーションは回りません。 「シュリンケージ」が含まれていないからです。 そこで、「シュリンケージ」を30%として計算をすると、ベースエージェントの57人に、さらに24人を加えた合計81人が必要となるのです。 では、「シュリンケージ」を反映してエージェント数の正しい計算をするためには、どうすれば良いでしょうか。 まずは、「シュリンケージ」の実態や実績を知ることが必要です(スライド8ページ参照)。 そのために、トレーニングやミーティングなど、「シュリンケージ」が発生するたびに、その開始と終了のタイミングを「記録」(あらかじめ設定したコードを入力するなど)し、そのデータを「出力」します。これらはPBXなどコンタクトプラットフォームの役割です。 ちなみに、シュリンケージの記録や出力の機能を持つ国内のプラットフォーム製品がとても少ないことに注意しなければなりません。このことがまさに、国内のコールセンターがシュリンケージを反映した要員計画をおこなっていない=シュリンケージの記録や出力に対するニーズがないことを物語っています。 そして、出力したデータ(=「シュリンケージ」に費やした時間の実績データ)をもとに、コールセンターのビジネスコントローラーが「リソース使用状況レポート」(スライド9ページ参照)を作成して「分析・検証」をおこない、将来のシュリンケージの予測や計画を立てます(スライド10ページ参照)。 重要なのは、単に実績ベースの予測に留まるのではなく、センターのビジネスプランに基づいて「計画」を立てることです。 例えば今年のトレーニングの実績が100時間であったとしても、来年、品質の大幅な向上を図るためにトレーニングを強化する、そのために来年は今年の倍の200時間のトレーニング時間を確保しよう、といった計画をするということです。 その結果、ここでは、来年は30%のシュリンケージの発生を計画したというわけです。 この30%をシュリンケージの目標値として、この計算フォーム(スライド11ページ参照)を使って必要なエージェント数を計算します。 1時間に500コール、平均処理時間360秒、サービスレベルの目標を80%/20秒と設定した場合、ベースエージェント数は57人が必要と算出されます。さらに、先ほど計画したシュリンケージの目標である30%を反映させると、全部で81人のエージェントが必要ということになります。 以上のプロセスが、世界中のコールセンターが当たり前におこなっている要員計画の基本なのですが、残念ながら、国内では、この基本をおろそかにしているコールセンターがあまりに多いのが現実です。 では、最後に本日の内容をまとめます。
コールセンターの仕事は顧客応対だけではありません。そのための準備(=トレーニングやミーティング)が必要です。それらに必要な時間と人数を反映した要員計画を立てることが、センターマネジメントの「基本」です。 <参考記事> コールセンターの運営に本当に必要な要員数とは 熊澤伸宏(文/Vol.35) |
サイトポリシー | プライバシーポリシー | 特定商取引に基づく表記 | Staff Only
Copyright © 2018 - 2022 コールセンターの教科書プロジェクト All Rights Reserved |