この記事は、コールセンタージャパン誌2021年3月号の特集「センターマネジメント「再入門」」に掲載されました。 新任センター長の質問に熊澤伸宏が答えます。 <質問> 保険会社のカスタマーサービスセンターのセンター長です。つい最近、異動してきたのですが、レポートされるデータが多すぎて、何をどう見て、どう活用すればいいのか、さっぱりわかりません。「最低限、これだけは押さえるべき」というKPIを教えてください。 <回答> コールセンターの仕事は、そこで起こるほとんどすべてのことを測定し数値で表すことができます。なので、その種類も数も膨大です。新任のセンター長が面食らうのは無理もありません。 ただし、それは数が多いことだけが理由ではありません。途方に暮れているセンター長に共通するのが、センターマネジメントの活動との関係性などを把握する前に、いきなり目の前の数値データだけを見て理解しようとすることにあります。 そもそもこれらの数値データは何のために存在するのでしょうか。 言うまでもなく、コールセンター全体からエージェント個人に至るまでの仕事のパフォーマンスを最大化して、その目的や目標を達成するためです。そのために取られる様々な活動の成果や進捗を測定・評価するための指標として数値データを利用するのです。 ちなみに、多くの数値データの中で、目的や目標の達成に特に強く影響する重要な指標のことをKPIと言います。 つまり、数値データは、例外なく組織や個人、あるいは施策や活動の目的や目標に紐づいており、数値データそれ自身が単独で存在することはあり得ません。従って、レポートされたデータを理解したり活用するためには、まずはその元となる目的や目標の理解から始めましょう。 ところが、「KPIマネジメント」という用語を、独立したマネジメント領域のように誤解する向きが少なくありません。単なる指標であるKPI自体をマネジメントするわけではありません。マネジメントするのはコールセンターやエージェントのパフォーマンスであり、KPIはその結果や進捗を測るためのツールに過ぎません。 なお、あなたがセンター長であるならば、数値データやKPIを受け身で見るのでなく、作る側の立場であることをしっかりと認識してください。センター全体の目的や目標を定め、その結果や進捗を測定・評価するための指標を作るのはセンター長であるあなたの最も重要な仕事です。 下表に一般的なコールセンターに共通する測定指標を、電話(インバウンド)、電話(アウトバウンド)、メール、ライブチャット、SNSの5つのチャネルごとに示しましたので参考にしてください。 電話(インバウンド)を除く4つのチャネルについては、電話(インバウンド)との共通部分を除いた固有の指標に限って記載しました。 各指標は、それぞれの目的や性格に応じて、「クオリティー」「サービス」「効率性」「エンゲージメント」「コスト」の5つに分類し、さらに1つひとつの指標について、その重要度から、「KPI(最重要)」「重要」「補足的」の3段階の優先度を設定しました。 この表では指標名の羅列に留めていますが、定義や計算式などの詳細については、拙著「コールセンター・マネジメントの教科書」(リックテレコム刊)をご覧ください。
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