前々回(9月12日)のコラム「コールのオーバーハングを踏まえてインターバルを設定する」について、データの観点から少し掘り下げてみたいと思います。 大切な点は「インターバルを15分にするには、そのセンター(業務)のAHTが7分30秒以下であることが望ましい」ということでした。 さて、ではその元となるAHT(average handle time; 平均処理時間)自体は正確に把握できているでしょうか? AHTとは、1件のコールの処理(通話+保留+後処理)に要する平均時間のことで、計算式は以下の通りです(注1)。 (通話時間+保留時間+後処理時間)÷応答コール数 読者の皆さんがお使いの統計管理システム(注2)が、この計算によるAHTを標準で出力してくれるのであればよいですが、そうでない場合は自前で計算をする必要があります。 その際、2つの点に注意する必要があります。 ひとつは、保留時間です。 統計管理システムによって、保留時間が通話時間に含まれているものと、そうでないもの(保留時間が通話時間とは別に単独で出力されている)があります。 さらに後者の場合、保留1回あたりの時間である場合と、1コールあたりの合計時間(1コールの中で2回保留した場合、2回分の保留の合計時間ということです)である場合があります。 これらをしっかり確認しておかないと、計算を誤ってしまうことになります。 もうひとつ注意すべきなのは、応答コール数をカウントするタイミングです。 統計管理システムによって、応答コール数を応答開始時にカウントする場合と、応答終了時にカウントする場合があります。 そのため、1本のコールが時間帯をまたがってオーバーハングした場合、応答開始時(前の時間帯)にカウントする場合は、後ろの時間帯の応答コール数が実際よりも少なく、応答終了時(後ろの時間帯)にカウントする場合は、前の時間帯の応答コール数が実際よりも少なくなります。 つまり、実際にはエージェントが応答していても、応答コール数として件数がカウントされない時間帯があるということです(注3)。 そうなると、コール数の予測、エージェント数の算出やスケジューリング、それらの実績のレポートなどに狂いが生じるかもしれません。 なので、皆さんがお使いの統計管理システムがどのような振る舞いをしているかを、必ず確認しておきましょう。 以上をお読みになって、にわかに不安に駆られた方がいらっしゃるかもしれません。 が、コールのオーバーハングは、前の時間帯からまたがって来るものと、後ろの時間へまたがるものがあるため、通常の場合、前後のオーバーハングが相殺されることで、大きな問題にはならないのです。 したがって、時間帯のインターバルをAHTの2倍以上の長さにする――インターバル15分の場合はAHTを7分30秒以下にする――ということを守っておけばよいでしょう。 ただし、オーバーハングが一方通行で発生する場合、例えば、特殊な事情により短時間にコールが集中するケース、あるいは、営業時間の開始直後や終了直前に大量の着信が発生するケースについては、オーバーハングによる影響をきっちりと考慮してください。
注1: 『コールセンター・マネジメントの教科書』第6章参照
注2: 米アバイアのCMS(call management system; コール・マネジメント・システム)に代表されるPBX/ACDの運用管理のレポーティングをおこなうシステム。『コールセンター・マネジメントの教科書』 第11章参照 注3: アバイアのCMSの場合、応答終了時にカウントされます。ちなみに「I_ARRIVED」というデータ項目を使うと、前の時間帯で着信コール数を把握することができます 長崎 智洋(文/Vol.13)
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