コールセンターだからこそ、絶対にこだわりたいもの――それは「ことば」です。 コールセンターだからこそ、「最も美しい日本語」を使いたいからです。 私たちは毎日、顧客と大量の「会話」を交わしています。 最近では、チャットやメッセージング・アプリなど「テキスト」によるコミュニケーションも急増しています。 また、顧客とのメールや、業務マニュアル、トーク・スクリプトなど「文書」の作成も大量におこなっています。 そのいずれも「ことば」で成り立っています。 したがって、質の高い「会話」や「文書」の作成のためには、「ことば」そのものを学ぶことが必要です。 以下に、そのための必携図書を紹介します。 まず、「話しことば」を学ぶには・・・・・・ 『NHK ことばのハンドブック 第2版』 NHK放送文化研究所編 NHKによる放送の「ことば」は、日常使われる話しことばの一つの規範(注1)として、国民の絶大な信頼を得ていることに疑いの余地はありません。 新人エージェントのトレーニングで、「NHKのアナウンサーの話し方を学びなさい」と指導するコールセンターも多いのではないでしょうか。 そんなNHKの放送用語委員会が、「ことば」の選択や使い分けの目安となる点をまとめ、放送関係者のみならず、「ことば」に関心を持つ多くの人たちに向けてわかりやすく編集(注2)したのが本書です。 エージェントのコミュニケーション・スキルのトレーニングやコーチング、トーク・スクリプトやQ&Aの作成などのために、コールセンターに必ず備えておくべき1冊です。 なお、本書のほかに、発音やアクセントについてまとめた 『NHK 日本語発音アクセント辞典』 も合わせて備えておくと良いでしょう。 次に、「書きことば」を学ぶには・・・・・・ 『記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集』 共同通信社編著 本書は、「分かりやすくやさしい文章、言葉で書く」「できるだけ統一した基準を守る」という原則のもと、「社会一般の文章表記に役立つ」(注3)ことを目的とし、新聞記者はもちろんのこと、ライターや編集者など、すべての文章作成に関わるプロフェッショナルの必携本として確固たる地位を築いています。 「ことば」の使い方や表記法というだけにとどまらず、実用的な文章を作成するために必要な、ありとあらゆるノウハウや情報が満載で、それらを読むだけでも、社会一般のさまざまな知識が得られる百科事典的な機能も持ち合わせています。 「分かりやすくやさしい文章、言葉」「統一した基準」は、コールセンターの業務マニュアルなどを作成するための大前提です。 そこが揺らいでいると、使い手であるエージェントにとっての読みにくさや使いにくさが生じ、マニュアルとしての機能や価値の低下、ひいてはオペレーションの品質の低下にまで発展します。 加えて、顧客との「テキスト」によるコミュニケーションが今後ますます増えることを考えれば、「書きことば」を学ぶための本書も、コールセンターに必ず備えておくべきでしょう。 なお、肝に銘じておくべきは、単純に「ことば」だけを学び、正しい使い方をしたところで、それは「マニュアル・トーク」に過ぎないということです。 例えば、『NHK ことばのハンドブック』 で学び、NHKのアナウンサーと同等のクオリティーで顧客と「会話」をしたらどうなるでしょう。 不自然です。 アナウンサーによる放送のトークと、コールセンターのエージェントによる顧客との「会話」は別物だからです。 つまり、今回ご紹介した図書は、「ことば」の使い方のルールを知るためのものであり、それだけで顧客とのコミュニケーション・スキルを学ぶことはできないということです。
注1:村神 昭 『NHK ことばのハンドブック 第2版』 はじめに より
注2:村神 昭 『NHK ことばのハンドブック 第2版』 はじめに より、筆者が一部改変 注3:共同通信社 『記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集』 まえがき より 熊澤伸宏(文/Vol.18)
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