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ワークフォースマネジメントの基本と実践

【第8回】コールセンターの要員計画を調整する「トレードオフ」を考える

7/31/2019

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これまでに、時系列分析やアーラン式などを用いたコールセンターの業務量やエージェント数の算出方法について解説してきました。

これら世界標準の科学的な手法により導いた業務量やエージェント数が、論理的には“最も正しい”ことに疑いの余地はありません。

しかし現実には、そうして導いた数値がそのまま使われることは少なく、さまざまな“調整”を経て、予測業務量や要員計画などが確定、承認されるのが通例です。

今回は、この“調整”作業である「トレードオフ」の考え方やプロセスについて解説します。

◆ トレードオフとはなにか

コールセンターの周囲には、さまざまなステークホルダー(利害関係者)が存在します。その代表格が、「顧客」「企業」「エージェント」の三者であり、それぞれがコールセンターに対して三者三様の要求をしてきます。

「顧客」は、コールセンターに手厚いサービスと質の高い顧客経験を望みます。「企業」は、利益の最大化を図るために、リソースの効率的な利用によるコストの最小化を要求します。「エージェント」は、コールセンターでの働き甲斐や働きやすさを求めます。

これらの要求には相反するものもありますが、コールセンターは、それらにバランスよく応えなければなりません。
そのために、エージェント数を増やしたり減らしたりすることによって、サービス、効率性、働きやすさなど、各ステークホルダーの異なる要求を調整し折り合いをつけるのが「トレードオフ」の作業です。

以下では、サービス、効率性、コスト、利益、スケールメリットの5つの視点から、表1の例を使ってエージェント数とのトレードオフを検証します。

表1は、1時間あたり500コール、平均処理時間360秒、サービスレベル目標80%/20秒 等の条件におけるエージェント数と、サービス、効率性、コスト、利益に関する指標との関係を表しています。表の中央の黒地(白抜き数字)の行が、目標のサービスレベル(20秒以内に80%以上応答)を達成するのに必要なエージェント数と、各指標の予測値です。
※こちらのページから表1のExcelファイルをダウンロードして利用できます。
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◆ サービスとのトレードオフ

「顧客」に対するサービスの観点から明確に言えるのが、「エージェント数を増やせばサービスが向上し、エージェント数を減らせばサービスは低下する」ということです。

これを、サービスレベル、放棄率、平均応答時間の3つのサービス指標から検証します。

目標のサービスレベル(80%/20秒)を達成するには57人のベースエージェントが必要で、その場合のサービスレベルは83.3%、放棄率は2.3%、平均応答時間は13秒となることが見て取れます。

もし予算に余裕があり、エージェントを1人増やすことができるならば、サービスレベルは83.3%から87.5%に上昇し、放棄率は1%減って1.3%に、平均応答時間は4秒短縮して9秒にそれぞれ向上することが期待できます。

一方、エージェントを1名減らし56名にすると、サービスレベルは77.8%、放棄率は4.1%、平均応答時間は19秒と悪化します。さらに1名減ると、サービスレベルは70.9%、放棄率は7.2%、平均応答時間は28秒と大幅な悪化を招くこととなります。

このような具体的な数値とともに、その変化の度合いも頭に入れておく必要があります。それを示すのが、表1のエージェント数と、3つのサービス指標をグラフ化した図1です。

これを見ると、エージェント数が、サービスレベルの目標を達成するのに必要な57人を下回ると、3つのサービス指標のどれもが急激に悪化することがわかります。1人分の人件費を惜しむごとに、顧客が受ける被害が倍々ゲームで拡大するということです。

一方、57人から増える場合のサービス指標の向上度合いは、緩やかであることがわかります。いたずらに増員しても、顧客に与えるサービスの向上効果は軽微であるため、費用対効果を慎重に見極める必要があるということです。 
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◆ 効率性とのトレードオフ

効率性の視点から見るべき指標は、「エージェント稼働率」です。

エージェント稼働率は、エージェントの勤務時間における実働時間(通話時間や後処理時間など、エージェントの“本業”である顧客オペレーション時間)の占める割合のことで、ステークホルダーの一人である企業の立場からは「リソース利用の効率性」を、エージェントの立場からは「仕事の忙しさ=働きやすさ」を表します。

表1からわかるように、エージェント数が増えるとエージェント稼働率は下がり、エージェント数が減るとエージェント稼働率は上がります。

一般に、ホテルや飛行機の客室稼働率など、稼働率は高ければ高いほど良いというイメージがありますが、コールセンターの場合はそうではありません。

エージェント稼働率が高いということは、エージェントにとって「仕事が忙しい」ことを意味します。

つまり、コール数が増え、電話がつながりにくくなり、表1からわかるように、サービスレベルや放棄率、平均応答時間などのサービス指標が軒並み悪化します。エージェントはトイレに行くのもままならず疲労困憊の状態に陥ります。

一方、エージェント稼働率が低いということは、コール数が少なく、サービス指標は良くなりますが、エージェントにとって「暇で退屈」であることを意味します。

いずれの場合も、その状態が継続すると、前者の場合はエージェントが仕事に燃え尽き、後者の場合は仕事のやりがいを見失い、最悪の場合、エージェントの離職を促すことになってしまいます。

このように、エージェント稼働率は、高過ぎたり低過ぎたりすることなく、自センターにとっての“最適値”を見つけ、それを維持できるようなエージェント数の設定と運用が求められるのです。

◆ コストとのトレードオフ

一般に、コールセンターのコストの70~85%を人件費が占めると言われています。
したがって、企業としては利益の最大化のために、コストの最小化、つまりエージェント数をできるだけ減らしたいと考えるのは言うまでもありません。

しかし、顧客へのサービスやエージェントの働きやすさなどとのバランスを考慮するならば、最小化ではなく、「最適化」という観点でトレードオフを考えるべきでしょう。

そこで考慮しておきたいのが、シュリンケージ(トレーニング、ミーティング、休暇など、顧客オペレーション以外に費やす時間)です。

表2は1時間に500コール、平均処理時間360秒、平均年収4百万円という条件において、サービスレベル目標とシュリンケージ率を変化させた場合の、エージェント数と人件費を試算しています。
※こちらのページから表2のExcelファイルをダウンロードして利用できます。

シュリンケージが少なければ、エージェント数は減り、人件費も安くなります。

しかし、トレーニングやミーティングは、サービス品質や効率性、エージェントのモチベーションなどにプラスの効果をもたらすため、安易に減らすべきではありません。むしろ、それらの時間の確保、増加を図るよう努めるのが、コールセンターの管理者の役割と考えるべきでしょう。
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その他、人件費ほどの影響力はありませんが、電話代にも注意を払います。

コールセンターの電話代は、通話時間だけでなく、エージェントが応答するまでの待ち時間、IVR(音声自動応答)や転送などのプロセスに要する時間、放棄されたコールの時間なども考慮する必要があるからです。

表1では、それらの要素をすべて含めた1秒あたりの単価を0.6円として、1時間あたりの電話代を試算しています。

◆ 利益とのトレードオフ

通信販売の受注センターなど、直接利益を生むタイプのコールセンターの場合、エージェント数の増減が、利益の増減に影響を与える場合があります。

例えば、通販受注センターのエージェント数が減ることで放棄が増加し、本来なら得ていたはずの売り上げ獲得の機会を損なうといったケースです。

冒頭の表1では、それを「逸失利益」として、受注1件あたりの利益を5,000円とした場合の金額を試算しています。

エージェント数が減ることでコスト(人件費)を減らすことができますが、その一方で、放棄の増加にともない、逸失利益も増加することになるので、両者のバランスを見極めることが必要です。

◆ スケールメリットの効果

エージェントの受電グループの編成や、コールセンターのサイト設置計画も、コストとのトレードオフに大きな影響があります。

図2は、サービス関連とセールス関連の2種類のコールを受ける際に、一人のエージェントがどちらか1種類の問い合わせを受ける場合(シングルスキル)と、両方の問い合わせを受ける場合(ユニバーサルスキル)の、それぞれ必要なエージェント数を比較しています。

シングルスキル(図2の上)の場合は、サービス関連の問い合わせを受けるグループが39人、セールス関連の問い合わせを受けるグループが92人で、合わせて131人のエージェントが必要です。

それに対して、ユニバーサルスキル(図2の下)のグループに必要なエージェント数は126人で、シングルスキルのグループより5人少なくて済みます。当然、その分、人件費も少なくなります。

ただし、そのためには、一人のエージェントが両方の問い合わせを受けるためのトレーニングなどに、シングルスキルグループよりも多くの負担がかかることを踏まえておく必要があります。

また、表3は、同じ条件の問い合わせを、3つのサイトに分割して受ける場合(マルチサイト)と、1か所ですべて受ける場合(統合サイト)に必要なエージェント数を比較しています。

マルチサイトが73人必要なのに対して、統合サイトは66人となっています。

このように、チームやセンターのサイズが大きくなるほど、“スケールメリット”が生じることとなります。
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◆ 間接的な影響も考慮する

エージェント数や要員計画の決定は、予算の都合だけで単純に考えるのでなく、サービスや効率性など、ステークホルダーのニーズや与える影響を考慮して慎重に検討することが必要です。加えて、最終的なステップとして、以下の例のように、エージェント数の増減が与える間接的な影響についても、念のために確認しておくことが必要です。

・ サービスが低下する ⇒ 顧客の苦情が増える ⇒ その対応のために平均処理時間がさらに増加する
・ サービスが低下する ⇒ 顧客の離反が増える ⇒ 収益機会が減少する
・ エージェント稼働率が上昇する ⇒ 多忙を嫌うエージェントが意図的に処理時間を伸ばして時間を偽装する ⇒ 必要なエージェント数が不足する ⇒ サービスが低下する
・ エージェント稼働率の上昇 ⇒ エラーの発生の増加など業務の品質低下 ⇒ 顧客満足が低下する
・ エージェント稼働率が高止まり状態となる ⇒ エージェントの遅刻や欠勤の増加、精神的・身体的な疾病の発症、契約勤務時間短縮の要望の増加、離職の増加

◆ トレードオフを前向きに考える

以上見てきたように、トレードオフは“あちら立てればこちら立たず”の厄介で面倒な作業であるとか、目先のコストの都合だけで“外野”から足を引っ張られるといった風に、どうしても後ろ向きに考えがちになってしまいます。

しかし、本稿の図表のようなツールを使うことで、要員計画の承認権限者との交渉を、具体的かつ科学的な数値を持って行うことができます。これは、いわゆる勘と経験による客観性に欠けた交渉にくらべて、はるかに有利です。

また、承認権限者に対して、数値による選択肢を与えることができるので、エージェント数の増減がもたらす具体的な影響や背景などの正確な理解を促し、合理的で根拠のある判断ができるようになります。

そのため、もし、コールセンターの望むかたちを下回る決定がなされても、それを受け入れやすくなります。

その結果、例えば、今期はサービスレベルの目標が達成できないことが明らかになったとしても、それが承認権限者の選択かつ決断であり、その結果について納得の上で合意することができます。

そして、場合によっては、来期はサービスレベルを達成するために、今期減らしたエージェント数を復活させる、といった約束をすることも可能です。

どんなに論理的で正確な要員計画であっても、それをコールセンターだけで決定できる企業はないに等しく、トレードオフは、避けて通ることのできない重要なプロセスと言えるでしょう。であれば、上記のようなメリットがあることを考慮に入れて、コールセンターの望む結論に少しでも近づけることができるよう、トレードオフの作業に前向きに取り組むことが賢明でしょう。


​Original: 2019年7月31日 - Last modified: 2022年1月14日

この記事はNTTコミュニケーションズ社が運営するビジネスマガジンサイト「Bizコンパス」(現在は非公開)に、「AI時代を生き抜く「本物」のコールセンター運営法」として連載した寄稿を、同社の許諾により転載したものです。なお、同サイトへの掲載時点とは異なる情報や文言表記について、オリジナルの内容を損なわない範囲で更新している場合があります。
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    熊澤 伸宏
    コールセンターの教科書
    ​プロジェクト 主宰
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