コールセンターの管理者やビジネス・コントローラーが意外に知らない電話の法則があります。 『1時間の間にかかってくる顧客のコールは、正時(注1)を起点に、最初の15分で全体の40%、次の30分(15分~45分)で30%、残りの15分(45分~60分)で残りの30%がかかってくる』 というものです。 多くのコールセンターでは、営業開始時刻(9時が最多数派でしょう)に多くのコールが集中し、フロア全体にエージェントの声が広がって忙しい1日の幕が上がります。 しばらくすると、喧騒が少々落ち着きます。そしてまたしばらくすると、にぎやかになってきます。 このサイクルを、コールセンターの多くの人は、営業開始直後に集中したコールにエージェントが頑張って応答して“スイープ”(注2)したからと考えています。 そのためにコールが減って喧騒が落ち着くというわけです。 確かにエージェントは頑張りました。 しかし、落ち着きの真の理由は、顧客のコール自体が減ったからなのです。 もしスイープが理由であるならば、(そしてベース・エージェント数(注3)がその後も変わらなければ)その後も落ち着いた状態が継続するはずです。 ところが、営業開始から45分経ったあたりから再びざわつき始め、1時間経過し次の時間帯になると喧騒が復活します。 なぜでしょう・・・。 これを説明してくれるのが、冒頭に記した「人は正時に電話をかける」法則です。 電話に限らず、人は何か行動する時に、「〇時になったら◇◇をしよう」という風に正時を起点にすることが多いのです。 最初に、「9時になったらすぐに電話しよう」と営業開始を待っていた顧客が集中します。そして「10時になったら・・・」「11時になったら・・・」という風に続きます。 多くのコールセンター関係者がこの法則を知らないのは、コール数を1時間単位でしか見ていなかったり、ベース・エージェント数が時々刻々と変化するため気付きにくいからでしょう。 しかし、この法則を把握していることで、コール数の予測の精度が高まり、エージェント数やスケジューリングもより的確なものになるはずです。 規模の大きなコールセンターでは、その効果は大きいでしょう。 だからこそ、コール数を15分単位で見ることに大きな意味があるのです。
注1: 正時 = 9時、10時など、分や秒といった端数のつかない時刻
注2: スイープ=特定の時間帯に集中したコールの応答がすべて完了して、コールセンターのフロアに静寂が訪れ、あたかもエージェントがすべてのコールを掃除してなくしたかのような状態 注3: ベース・エージェント数 = 電話オペレーションなど、顧客コンタクト業務をおこなうために配置された実働人数 熊澤 伸宏(文/Vol. 6)
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このたびの西日本豪雨により被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。 豪雨、地震、火山活動、台風など、多くの自然災害が発生しています。 そのために、保険や運輸・交通系企業を代表格として、さまざまなコールセンターが緊急対応などを強いられることになります。 例えば太陽光発電システムを供給する企業では、住宅が倒壊したり流されてもソーラーパネルは発電を続けるため、電気系統が水に触れることによる感電を回避するための対応に追われているそうです。 このように、顧客のケアや取引先のサポートに追われるコールセンターがある一方、コールセンター自らが被災して通常業務の実施が困難となり、その復旧作業を余儀なくされる場合もあります。 コールセンターが被災し機能停止に陥ることは組織全体にとっての大きなリスクとなるため、2011年の東日本大震災を契機に、多くのセンターで「業務継続計画」(英語の短縮表記でBCP(注1)と呼ばれることが多いですね)の策定が進みました。 しかし、「BCP」の多くは大規模災害を想定したもので、その内容も「業務継続計画」というよりも「災害復旧計画」の色彩が濃いように思われます。 もちろんそれは重要なことですが、コールセンターを襲う災害は今回のような大規模自然災害に限りません。 悪天候や交通機関障害、システム障害やコールの大幅なスパイク(注2)といった“事故レベル”のものは、頻繁に発生しています。 これらはいずれもコールセンターの正常な運営を妨げるものであり、その影響を最小限にとどめるための準備と計画が不可欠ですが、残念ながら多くのコールセンターでは、その備えが十分ではなく、現場の管理者の日常業務の一環として済まされていることが少なくありません。 そのため、障害が発生した時に採られる対策はいつも後手に回り、管理者個人の裁量によるところが大きいため、その場限りの一貫性を欠いたアクションで済まされがちです。 経験が活かされずマニュアル化もされないことで、同じ障害なのに前回より被害を軽減できないのです。 私たちは、大規模災害だけでなく、こうした日常的に発生する障害についても「BCP」を備えておく必要があります。日常的に発生しているのですから、むしろこちらの方が優先度が高いといえるかもしれません。 『コールセンター・マネジメントの教科書』では、第12章でコールセンターの業務継続計画を、日常的業務継続計画としての「BCP」と、災害復旧計画としての「DRP」(注3)とに分類して、それぞれについて解説しています。 7月も後半を迎え、いよいよ台風シーズンに突入です。 近年は台風が大型化し直撃の頻度も増え、限られた時間とはいえセンターをクローズする機会も増えています。 台風が襲来するタイミングは予測できませんが、十分な備えは可能です。 日常的なイベントとして台風が訪れる沖縄県のコールセンターには「台風BCP」が備わっており、淡々と冷静に台風の襲来に対処します。 本土で経験するよりもはるかに強烈な台風の直撃に見舞われますが、それによって沖縄のコールセンターが機能不全に陥ったという話を聞くことがないのは、「台風BCP」の貢献によるものといえます。 『コールセンター・マネジメントの教科書』にその事例を掲載していますので、ぜひ参考にしてください。 ちなみに、沖縄では県花である「デイゴ」の花(上の写真の真っ赤な花です)がたくさん咲くと台風の当たり年だと言われています。今年の咲き具合がどうだったか、確認しておくとよいかもしれません。
注1: BCP = Business Continuity Plan(業務継続計画)の短縮形
注2: スパイク=コールが短時間に過度に集中する状態。コール数の軌跡がスパイク・シューズの針のように尖った形になることから、コールセンターで慣用的に使われる用語 注3: DRP = Disaster Recovery Plan(災害復旧計画)の短縮形 熊澤 伸宏(文/Vol. 5)
「Nice-to-Have」は、「あれば良いもの」、言い換えれば「なくても構わないもの」のことで、「物理的なもの」(念のために保存している資料など)と「行為」(万が一の場合の2重、3重のチェックなど)のふたつの要素があります。 コールセンターに限らず、一般的なビジネス用語としてご存知の方も多いのではないでしょうか。 「Avoidable Input」と「Nice-to-Have」が、コールセンターの改善によく効くというのは、“モグラたたき”や“なくても構わない過剰な作業”が、オペレーションの現場に多く見られる“悪いクセ”であるためです。 「細部にこだわる」というコールセンターの特性が行き過ぎることによって、この2つが現れやすくなるのです。 したがって、このふたつの視点を持って現場のオペレーションに目を凝らすと、いくつもの“改善ネタ”を容易に見つけることができます。 両者には“連係プレイ”も見られます。 例えば、年に一度のエラーのために毎日コールの全件をチェックするという行き過ぎた作業(Nice-to-Have)は、エラーの発生を前提としています。この行き過ぎた作業をなくすためには、そもそもエラーが発生しないよう、エラーの元を断つ(Avoidable Input)方が高い効果を得られます。 既存の業務を点検する時にも、新しい仕事を始める時にも、常に「Avoidable Input」と「Nice-to-Have」の視点で見る“クセ”をつけることで、無意識のうちに「継続的な改善」を実践できるのです。
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