このたびの西日本豪雨により被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。 豪雨、地震、火山活動、台風など、多くの自然災害が発生しています。 そのために、保険や運輸・交通系企業を代表格として、さまざまなコールセンターが緊急対応などを強いられることになります。 例えば太陽光発電システムを供給する企業では、住宅が倒壊したり流されてもソーラーパネルは発電を続けるため、電気系統が水に触れることによる感電を回避するための対応に追われているそうです。 このように、顧客のケアや取引先のサポートに追われるコールセンターがある一方、コールセンター自らが被災して通常業務の実施が困難となり、その復旧作業を余儀なくされる場合もあります。 コールセンターが被災し機能停止に陥ることは組織全体にとっての大きなリスクとなるため、2011年の東日本大震災を契機に、多くのセンターで「業務継続計画」(英語の短縮表記でBCP(注1)と呼ばれることが多いですね)の策定が進みました。 しかし、「BCP」の多くは大規模災害を想定したもので、その内容も「業務継続計画」というよりも「災害復旧計画」の色彩が濃いように思われます。 もちろんそれは重要なことですが、コールセンターを襲う災害は今回のような大規模自然災害に限りません。 悪天候や交通機関障害、システム障害やコールの大幅なスパイク(注2)といった“事故レベル”のものは、頻繁に発生しています。 これらはいずれもコールセンターの正常な運営を妨げるものであり、その影響を最小限にとどめるための準備と計画が不可欠ですが、残念ながら多くのコールセンターでは、その備えが十分ではなく、現場の管理者の日常業務の一環として済まされていることが少なくありません。 そのため、障害が発生した時に採られる対策はいつも後手に回り、管理者個人の裁量によるところが大きいため、その場限りの一貫性を欠いたアクションで済まされがちです。 経験が活かされずマニュアル化もされないことで、同じ障害なのに前回より被害を軽減できないのです。 私たちは、大規模災害だけでなく、こうした日常的に発生する障害についても「BCP」を備えておく必要があります。日常的に発生しているのですから、むしろこちらの方が優先度が高いといえるかもしれません。 『コールセンター・マネジメントの教科書』では、第12章でコールセンターの業務継続計画を、日常的業務継続計画としての「BCP」と、災害復旧計画としての「DRP」(注3)とに分類して、それぞれについて解説しています。 7月も後半を迎え、いよいよ台風シーズンに突入です。 近年は台風が大型化し直撃の頻度も増え、限られた時間とはいえセンターをクローズする機会も増えています。 台風が襲来するタイミングは予測できませんが、十分な備えは可能です。 日常的なイベントとして台風が訪れる沖縄県のコールセンターには「台風BCP」が備わっており、淡々と冷静に台風の襲来に対処します。 本土で経験するよりもはるかに強烈な台風の直撃に見舞われますが、それによって沖縄のコールセンターが機能不全に陥ったという話を聞くことがないのは、「台風BCP」の貢献によるものといえます。 『コールセンター・マネジメントの教科書』にその事例を掲載していますので、ぜひ参考にしてください。 ちなみに、沖縄では県花である「デイゴ」の花(上の写真の真っ赤な花です)がたくさん咲くと台風の当たり年だと言われています。今年の咲き具合がどうだったか、確認しておくとよいかもしれません。
注1: BCP = Business Continuity Plan(業務継続計画)の短縮形
注2: スパイク=コールが短時間に過度に集中する状態。コール数の軌跡がスパイク・シューズの針のように尖った形になることから、コールセンターで慣用的に使われる用語 注3: DRP = Disaster Recovery Plan(災害復旧計画)の短縮形 熊澤 伸宏(文/Vol. 5)
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